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交通事故の知恵袋

【交通事故法務の基礎知識④】損害額の算定 その3

前回,前々回の知恵袋に引き続き,損害額の算定方法について,交通事故による慰謝料を中心に解説させていただきます。

 

以前,紹介させていただいた通り,実務上,慰謝料については,(1)交通事故により傷害を負った場合,(2)交通事故により後遺症を負った場合,(3)交通事故により死亡した場合に,それぞれの基準に従って,慰謝料の金額が決定されるのが通例です。

 

(1)傷害の場合

 

交通事故により,被害者が傷害を負った場合(後遺症が残った場合については後述します),原則として,入通院期間を基礎として,入通院慰謝料表を参考に,慰謝料の金額が判断されます(入通院慰謝料表については,赤い本等をご覧ください)。

 

上記の入通院慰謝料表は,一つの目安ですので,以下のような修正がなされることがあります。

・傷害の部位,程度によっては,上記の入通院慰謝料表の金額を20~30%程度増額する。

・通院が長期にわたる場合,症状,治療内容,通院頻度を踏まえ,実通院日数の3.5倍程度を通院期間の目安とする(例えば,通院期間が約1年であるが,実通院日数が70日である場合,通院期間の365日ではなく,245日(=70×3.5)を基礎として,判断する)。

・被害者側の事情により,特に入院期間を短縮したと認められる場合(例えば,被害者が幼児を持つ母親であるとか,仕事等の都合など),上記の入通院慰謝料表の金額を増額することがある。

 

(2)後遺症を負った場合

 

交通事故により,被害者が後遺症を負った場合,自賠責保険における後遺障害等級に応じて,下記の表のとおり,慰謝料が算定されます。

 

第1級

第2級

第3級

第4級

第5級

第6級

第7級

2800万円

2370万円

1990万円

1670万円

1400万円

1180万円

1000万円

第8級

第9級

第10級

第11級

第12級

第13級

第14級

830万円

690万円

550万円

420万円

290万円

180万円

110万円

 

もっとも,上記の表は,一応の目安ですので,実際の事件においては,具体的な事情により,増減されることがあります。

 

例えば,特定の後遺障害等級の認定がされたが,より上級の等級には至らない場合(例えば,外貌醜状痕(交通事故による傷跡が,人目に触れる部分に残ること)で第12級の後遺障害には該当するが,それ以上の等級には至らない場合)でも,症状によっては,認定された等級の慰謝料より多くの慰謝料が認められることがあります。

 

また,自賠責保険における後遺障害等級に至らない程度の後遺症を負った場合(例えば,交通事故により,2歯が欠けたために,入れ歯を入れざるを得なくなった場合(3歯以上でなければ,自賠責保険における後遺障害とは認められません)),上記の表によれば,慰謝料が認められませんが,症状に応じて,後遺障害慰謝料が認められることがあります。

 

(3)死亡した場合

 

被害者が交通事故により亡くなった場合の慰謝料については,実務上,被害者の家族構成に応じて,一応の目安が定められています。

具体的には,

被害者が一家の支柱である場合(つまり,被害者の収入により生計を維持している場合)・・・2800万円

②被害者が母親,配偶者である場合・・・2500万円

③その他の場合(独身の男女,子ども,幼児等)・・・2000万円~2500万円

とされています(平成28年版赤い本)。

 

もっとも,これはあくまで一つの目安ですので,実際の事件においては,個別具体的な事情によって,増減されることがあります。

 

弁護士 野田 俊之

 

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