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【交通事故法務の基礎知識⑤】過失割合・過失相殺とは

交通事故を原因として損害賠償を請求する場合,加害者との間で過失割合が争われることがよくあります。

今回は,この過失割合の意味や過失割合の前提となっている過失相殺の制度について,解説させていただきます。

 

交通事故が発生した場合,多くの場合,加害者だけでなく,被害者の方にも何らかの過失が認められます(例えば,交差点において,右折車と直進車が衝突したという交通事故の場合でも,右折車だけでなく,直進車にも速度違反などの過失があると判断されることが少なくありません。)。

この場合に,被害者に生じた損害のすべてを加害者が賠償しなければならないとすると,不公平な結果となってしまいます。

そこで,法律上,被害者にも何らかの過失がある場合,裁判所が損害賠償額を算定する際,被害者の過失を考慮して,損害賠償額を減額することができることとされています(民法722条2項)。

 

このように,被害者に生じた損害を,被害者と加害者との間で公平に分担するための制度が「過失相殺」と言われるものです。

 

そして,過失相殺を考慮して,実際に加害者に請求することのできる損害額を算定するために,被害者と加害者の過失を割合で示したものが「過失割合」と言われるものであり,実際の損害賠償額は,損害×(1-被害者の過失割合)によって算定されます。

 

実務上,この過失割合を判断するにあたっては,東京地裁民事交通訴訟研究会編「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(別冊判例タイムズNo.38)(以下,「別冊判タ」)の基準が最もよく使われています。

 

別冊判タによると,例えば,信号機のある交差点において,直進車・右折車がともに青信号で交差点に進入し,直進車と右折車が衝突した場合,基本過失割合は,「直進車20:右折車80」とされています(別冊判タ【107】)。

この基本過失割合は,修正要素によって修正されることがあり,例えば,直進車に15km以上の速度違反がある場合,過失割合が「直進車30:右折車70」に修正されます。

 

もっとも,実際に発生する交通事故は千差万別であるため,別冊判タに記載された基準通りの態様の事故は多くありません。

そのため,実際に加害者に損害賠償を請求していくにあたっては,別冊判タの基準を参考に,具体的な過失割合を検討することが必要になります。

具体的なケースにおける過失割合については,一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。

 

弁護士 野田 俊之

 

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