事故後しばらく経ってからの痺れや痛みについて(事故と傷害・障害の因果関係)
この論点については,過去にこのサイトでも触れていますので,「因果関係」というようなキーワードで検索をいただければと思いますが,以下においては,この論点についての裁判例を補充しておきます。そのままコピペできるように,以下では準備書面に書くように記載しておきます。結論的には,事故から7カ月も経過した後で発生した痺れについても事故との因果関係を認めた判例もありますので,希望をもって前向きに弁護活動をすることが大切ということになります。
交通事故後遅れて症状が発生,拡大した場合であっても,事故との因果関係を肯定した裁判例は複数存在する(東京地判平成25・8・6交民46巻4号1031号,大阪地判平成10・1・29交民31巻1号130頁,大阪地半平成25・1・10交民46巻1号1頁)。
特に,大阪地判平成10・1・29(甲37)では,原告が,事故当日の平成4年2月17日に病院を受診したところ,頚部痛があるが,上肢のしびれはなく,指の微細運動は良好であったところ,右手にしびれ感を訴え始めたのは,事故から約7ヶ月も経った同年9月11日であった。その後,同年12月25日には,これまで訴えのなかった左手から前腕尺側しびれ感を訴え,平成5年1月8日には,しびれ感は左手のみであるとされた。両手のしびれが主訴とされたのは,事故から約1年後の平成5年2月26日になってからであったという事案で,裁判所は,「本件事故前には原告は特に支障を感ずることなく化粧品の荷詰の仕事に従事していたこと,原告は本件事故により転倒して路面に頭部等を打ったものであること等前認定事実に照らすと,原告の症状は経年性の頸椎椎間板変性に本件事故の影響が加わって生じたものとみるべきである」として,交通事故の外傷によって,手のしびれの症状が遅れて発生,拡大した場合でも,椎椎間板ヘルニアの症状として,事故との因果関係を認めている。
このように,複数の裁判例が,交通事故後,手のしびれの症状が遅れて発生,拡大した場合であっても事故との因果関係を認めているのは,これまで原告が主張してきた臨床上の経験則を,裁判所が正当なものと認めた結果であるといえる。
弁護士 牧野誠司