交通反則通告制度(反則金制度)について

■ポイント


1.交通反則通告制度は、本来、道路交通法違反被疑事件として刑事手続(=公訴提起or家庭裁判所の付審判)により処理されるところ、反則金を支払うことで、これらの刑事手続を開始させずに事件を終了させる制度


2.交通反則通告制度の適用対象は、「反則者」の行為

⇒①無免許運転者、②飲酒運転者、③交通事故を起こした者は「反則者」から除外されているため、これらの者の反則行為は原則刑事手続で処理される。


3.「反則行為」

⇒危険性の高い違反行為等は除外されており、それらの行為は刑事手続で処理される。

例:飲酒運転、無免許運転、時速30km以上のスピード違反(高速道路では時速40km以上)、大型自動車等の2倍以上の過積載運転等


4.自転車による道路交通法の違反行為は交通反則通告制度の適用なし


5.駐停車禁止行為に関する「反則者」はあくまでも運転者であり使用者(=所有者)ではない

⇒車両を貸しているケースでは、車両の所有者は「反則者」には該当しないため、「反則金」は徴収されない。しかし、運転者が一定期間内に反則金を払わない場合には、交通反則通告制度とは別の制度である放置違反金徴収制度に基づき、放置違反金を徴収される。


6.不服や異議がある場合には、反則金を納付せず、刑事手続で争う他ない。

 

第1 交通反則通告制度


この制度は、大量に発生する道路交通法違反事件を処理するため、処理手続の特例として設けられたもので、昭和43年7月1日から施行されている制度です。

 

この制度は、自動車等の運転者がした運転に関する違反行為であって、危険性の高い違反行為等を除いたものを反則行為とし、これを犯した者を、特定の場合を除いて反則者とし、そして反則者に対して定額の反則金の納付を通告し、その通告を受けた者が、一定の期日までにこれを納付したときは、その違反行為の事件について、一定の例外を除き、公訴が提起されず又は家庭裁判所の審判に付されなくなり、納付がなかったときは、刑事手続又は(少年に対して)保護手続が進行することを骨子とする制度です(昭和45年犯罪白書参照)。

 

導入された背景には、道路交通法違反事件が多発し、このような多数の違反者が、その違反の軽重を問わず、すべて犯罪者として送致され、その多くが刑を科せられて、いわゆる前科者となることは刑事政策的見地からも決して好ましい事態ではなく、また、道路交通法違反事件の増加によって、現実的に全ての事件に対応することができないといった事情も存在していました。

 

以上のとおり、交通反則通告制度は、本来、道路交通法違反被疑事件として刑事手続(=公訴提起or家庭裁判所の付審判)により処理されるところ、反則金を支払うことで、これらの刑事手続を開始させずに事件を終了させる制度といえます。

 

第2 交通反則制度の適用対象

 

1.基準


交通反則制度は、「反則金を納付した者」が刑事手続を受けない制度です。

 

ここでいう「反則金」とは、「反則者がこの章の規定の適用を受けようとする場合に国に納付すべき金銭」とされています(道路交通法第125条第3項)。

 

そのため、制度の適用対象は、「反則者」であるか否かがポイントとなります。

 

「反則者」は、「反則行為をした者」と定められていることから、以下「反則行為」から確認し、改めて「反則者」の具体的要件について確認をします。

 

2.反則行為


「「反則行為」とは、前章の罪に当たる行為のうち別表第二の上欄に掲げるものであって、車両等(重被牽引車以外の軽車両を除く。次項において同じ。)の運転者がしたものをい」う(道路交通法第125条第1項)と定義されています。

 

ポイントは、危険性の高い違反行為等は除外されている点であり、例えば、飲酒運転、無免許運転はもちろん、時速30km以上のスピード違反(高速道路では時速40km以上)、大型自動車等の2倍以上の過積載運転も除外されています。

 

※現時点では、「軽車両」は除外されていますので、自転車による違反行為は交通反則通告制度の適用はありません。

 

3.反則者


「「反則者」とは、反則行為をした者であって、次の各号のいずれかに該当する者以外のものをいう。」(道路交通法第125条第2項)と定義されています。

 

次の各号に該当する者として「反則者」から除外されている者は、①無免許運転者、②飲酒運転者、③反則行為をし、よって交通事故を起こした者の3種類です。

 

したがって、例えば、飲酒運転をして信号無視をした場合、信号無視の行為は反則行為に該当するものの(飲酒運転はそもそも反則行為の対象外)、飲酒運転者が信号無視をした場合には、当該運転者は「反則者」に該当しないため、飲酒運転者の信号無視に対しては反則制度の適用はなく、原則通り刑事手続によって処理されることになります。

 

なお、駐車違反行為そのものに関しても、交通反則制度の適用対象行為とされていますが(警察官等から運転者に対し、当該車両の停車の方法を変更し又は当該車両を当該停車が禁止されている場所から移動すべきことを命じられたにも関わらず、従わない場合には、反則制度では処理されず、原則どおり刑事手続で処理されます。)、実際に駐車違反行為をした人物が「反則行為をした者」となります。

 

そのため、仮に、車両の所有者が友人に車両を貸し、当該友人が駐車違反行為をした場合、反則者はあくまでも運転者である友人であり、車両の所有者ではなく、反則金を支払うべき人物は運転者である友人となります。

 

しかし、放置車両の場合には、誰が運転者であり、駐車違反行為をした者か確定することが困難という事情もあり、反則制度とは別に、放置車両の使用者(=この例では所有者)に対して放置違反金の徴収制度が規定されています。

 

運転者である「反則者」が一定の期限内に反則制度に基づき反則金を支払う(又は刑事手続を受ける)場合を除き、放置車両の使用者(=この例では所有者)は、反則制度とは別の手続に基づき、放置違反金を徴収されることになりますので、注意が必要です。

 

第3 反則金の金額


反則金の金額は、反則行為に応じて法令で細かく定められています。

 

■例

・時速20km以上30km未満のスピード違反の場合

大型車:2万5000円

普通車:1万8000円

二輪車:1万5000円

原付車:1万2000円

・赤信号無視

大型車:1万2000円

普通車:9000円

二輪車:7000円

原付車:6000円

 

詳細は、警視庁のHPを参照。

 

第4 不服や異議がある場合の対応


交通反則制度は、任意に反則金を納付し、簡易な事件処理を受ける一種の行政的措置のため、行政不服審査請求の対象になりません。

 

反則告知を受けたことについて不服や異議がある場合には、事実上、警察との協議をすることになりますが、なお納得ができないという場合には、反則金を納付しないことにより、その後の刑事手続において争うことになります。

 

以上

(弁護士 武田雄司)