症状固定の時期

交通事故で受傷された場合、数か月間通院を続けて治療を受けているにも関わらず、ある時期からほとんど症状が回復しなくなることがあります。

その場合、主治医から後遺症であると診断されることがあります。これを、「症状固定」と言います。

主治医が後遺症であると診断した場合、医学的にはこれ以上症状の改善は見込めない状態だということになりますので、症状固定日以降は、仮に治療を受けたとしても、その治療費を加害者に請求できなくなります。

このように、症状固定日は治療費の請求ができなくなる分岐点になりますので、症状固定がいつであるかということは、裁判になったときに争点になることが多いのです。

このように書くと、「じゃあ、主治医に後遺症と診断される日を先延ばしにした方が、治療費を長く支払ってもらえて得ではないか」と思われるかもしれません。

しかし、主治医が後遺症と診断した日が必ずしも裁判で症状固定日と認定されるわけではありませんので、注意が必要です。

裁判で症状固定日が争点となった場合、病院の診断書や検査結果などの診療記録を吟味して、実際に被害者の症状の回復が見込めなくなった時期がいつであったかを検証します。

その結果、主治医が後遺症と診断した日よりも数か月前が症状固定日であると認定された場合、症状固定日以降の治療費は加害者が負担すべき賠償対象から外される可能性があるのです。

このように、どのタイミングで医師に後遺症診断書を作成してもらうべきかは難しい問題があります。

不安に感じられたときは、お早めに弁護士にご相談下さい。

(弁護士 松本政子)