素因減額とは
交通事故にあった被害者が加害者や保険会社を相手に裁判をした場合、「素因減額」が争点になる場合があります。
これは、被害者の精神的傾向や既往症が、症状の悪化などに影響を与えたと考えられる場合に、被害者の損害のうち一定割合については加害者が補填しなくても良いとする考え方です。
例えば、もともと腰痛の治療をしていた方が交通事故を原因とする腰痛の治療をしたという場合に、既往症があったために通常の腰痛治療よりも長期化したなどと判断される場合に「素因減額」の問題が発生します。
もっとも、どのような場合に「素因減額」が問題となるかは、事案によってそれぞれです。
裁判では、交通事故の衝撃の程度・受傷の部位・治療経過・素因の内容などを吟味して、その「素因」が損害の発生又は拡大に影響を及ぼしているかどうかが具体的に判断されます。
つまり、同じような既往症を持ったAさんとBさんがそれぞれ交通事故にあった場合であっても、Aさんの裁判では素因減額がされてBさんの裁判では素因減額がされないということもあり得るのです。
持病をお持ちで交通事故にあわれた方の中には、「素因減額」という言葉をどこかで耳にして心配されている方もいらっしゃると思います。
ご自身の裁判で素因減額が問題になるかどうかは、上述の通り、様々な要素から判断する必要があります。
もしご心配であれば、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
(弁護士松本政子)