外国人の交通事故の場合に適用される法律は

1 準拠法の問題

 

日本国籍を有しない外国人が,日本国内で交通事故の被害にあった場合,適用されるのは日本の法律なのか,日本の法律でないとすれば,当該外国人が有する国籍の国の法律なのか,という問題が生じます(準拠法の問題)。

 

2 物損,人損(傷害)事故の場合

 

交通事故による損害賠償請求は,不法行為あるいは自動車損害賠償保障法(以下,「自賠法」といいます。)の運行供用者責任,タクシー乗車中の事故等の場合の運送契約の債務不履行に基づくものがあります。

 

日本の「法の適用に関する通則法」(以下,「通則法」といいます。)17条は,「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は,加害行為の結果が発生した地の法による。」としているため,日本国内で交通事故が発生した場合は,加害行為の結果が発生した地=日本の法律によることになります。

 

また,債務不履行の場合には,通則法7条が,当事者が契約等の法律行為の際に選択した地の法によるとし,通則法8条が,「前条の規定による選択がないときは,法律行為の成立及び効力は,当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による」としているため,当事者間の運送契約等で日本法による旨の合意がある場合はもちろん(あまりこのような合意がなされることはないかと思われますが),合意がない場合であっても,たとえば,日本国内をタクシーで移動する際に締結される運送契約の場合は,最も密接な関係がある地は通常日本であるため,日本法が適用されることになります。

 

3 死亡事故の場合の相続の可否

 

死亡事故の場合は,通則法36条により,「相続は,被相続人の本国法による」とされているため,その相続人が死亡した外国人の債権・債務を承継するかどうかは,死亡した外国人の本国の相続法により決められることとなります。