自賠責の被害者請求
交通事故の被害にあった場合、被害者は①加害者及び加害者の加入する任意保険会社に賠償請求する方法と②加害者が加入する自賠責保険会社に賠償請求する方法を選ぶことができます。
一般的には②を選ばずに①を選ぶ方が多いようですが、先に②を選んでから不足分を①で請求することもできます。
②の方法は、「支払請求書兼支払い指図書」や「事故発生状況説明書」といった書類に必要事項を記入したり、実印の印鑑登録証明書を添付したりする必要がありますので、面倒に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、案件によっては①よりも②の方が被害者にとって有利に取り扱ってもらえることもあります。
それは、当事務所ホームページの知恵袋でも何度か登場している「過失相殺」がポイントです。
過失相殺とは、民法上は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」と規定されています。
つまり、被害者に法律上の過失が認められる場合、加害者は、被害者が被った損害のうち何割か減額した金額を被害者に支払うというものです。
被害者の過失が大きければ大きいほど、加害者が被害者に支払う損害の割合は小さくなっていきます。
従って、被害者の過失が大きな案件では、被害者が①の方法で請求すると、賠償額が大幅に減額されて被害者の損害がほとんど補填されない場合があるのです。
このような場合、被害者は②の方法で請求すれば救済されることがあります。
なぜなら、自賠責保険は被害者救済の理念に基づく制度のため、「過失相殺」の割合が比較的緩やかに判断されるのです。
そのため、被害者に一定の過失があっても、②の請求の場合は賠償額が減額されないか、減額されたとしてもその割合が①よりも小さくなることがほとんどです。
このように、事案によっては②の手続きをとることが大切です。
ご自身のケースについて、①か②で迷われた場合は、弁護士にご相談ください。
(弁護士 松本政子)