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オーストラリアビジネス法務(11)-オーストラリアにおける外国企業の進出形態-

弁護士 髙橋健

 

1.日本企業が海外に進出する際の事業形態

 

 

今回は、「オーストラリアで事業を行う場合、どのような事業形態があるのか」という入り口の議論をお話したいと思います。

 

 

通常、日本企業が海外で事業を行う場合、①駐在員事務所、②日本法人の支店、③現地法人の設立の3つが代表例としてあげられることが多いです。

 

今回は、そのうち、「どのような場合に①では足りず、②や③が必要となるのか」という視点と、「オーストラリアで事業・経営を行うにあたり、支店形態(②)ではその事業範囲等で制限を受けることがあるか」という視点につき、オーストラリア会社法の規定を踏まえて簡単に検討してみたいと思います。

 

 

2.どのような場合に駐在員事務所では足りない(不適切)と考えられるかについて-オーストラリアで事業を行う(Carrying on business)か否かの視点-

 

 

まず、オーストラリアに進出するといっても、様々な目的や深度があるかと思います。

 

そして、(オーストラリアに限らず)海外で本格的な事業展開を行う前段階の情報収集や市場調査等であれば、駐在員事務所(①)という形態で活動を行うことが可能、と言われることがあります。

 

 

しかしながら、次の述べるオーストラリア会社法の規定に鑑みれば、オーストラリアで駐在員事務所として活動できる範囲は、極めて限られており、現実的にはオーストラリアで登録された支店(②)や、現地法人(③)によらざるを得ないものと考えられます。

 

 

まずオーストラリア会社法601CD条(When a foreign company may carry on business in this jurisdiction)の(1)では、外国企業は、この章(DIVISION 2–FOREIGN COMPANIES)に基づいてオーストラリアにて登録がなされていなければ事業を行うことができない、とされています。

 

そして、オーストラリア会社法601CE(Application for registration)では、その登録のために必要となる申請書及びその添付資料や、ASIC(Australian Securities and Investments Commission)にその申請を行うこと等が定められています。

 

 

そのため、上記オーストラリア会社法の規定からは、外国企業がオーストラリアで事業を行う(Carrying on business)場合は、ASICへの登録等を必要としない駐在員事務所では不適切であることが分かります。

 

 

そして、この「事業を行う」(Carrying on business)場合については、オーストラリア会社法18条から21条までのDIVISION 3–CARRYING ON BUSINESSという箇所で規定が設けられています。

 

そこでは、どのような場合にオーストラリア国内で「事業を行う」場合にあたるのか、あたらないのかが規定されていますが、それらを見る限り、「事業を行う」にあたる場合はかなり広範囲に及ぶと考えられます。

 

 

一例をあげれば、オーストラリア会社法21条(Carrying on business in Australia or a State or Territory)の(1)では、オーストラリアに事業所を持つ法人は、(状況に応じて、という留保があるものの)オーストラリア国内において事業を行っている(Carrying on business)ものとされています。

 

 

したがって、日本の企業がオーストラリア国内に事業所や事務所を構える以上は、仮に本格的な事業展開を行う前段階の情報収集や市場調査等のみ行う場合であっても、事業を行っているとみなされる危険があり、注意が必要といえます。

 

 

3.支店形態(②)であることから制限される事業の種類・範囲等があるかについて

 

 

上記2から、日本企業がオーストラリアで、事業所等を持って何らかの経済活動を行おうとすれば、①の駐在員事業所形態では不適切なことが多く、②の日本法人の支店か③の現地法人設立が必要になってくることが分かります。

 

 

それでは、その②と③の事業形態の違いによって、オーストラリア国内で行う事業活動に何らかの違い(制限の有無)はあるのでしょうか。

 

 

この②の支店形態をとるべきか、③の現地法人形態をとるべきか、については、会計上・税務上のメリット・デメリット等、検討すべき事項も少なくないのですが、ここでは、オーストラリア会社法において、支店形態による場合に事業の種類や範囲等で制限が加えられるか否かに絞って検討します。

 

 

アジア各国などでは、外国企業が支店を設置する場合、一部の業種(例えば金融機関)に限定して支店設立を認めたり、あるいは事業の範囲等に制限を設けている国もあると聞きますが、オーストラリア会社法では、そのような制限は見当たらず、基本的には現地法人形態と同様に事業展開できると考えられています。

 

 

勿論、その前提として、日本企業のオーストラリア支店は、上記2で少し触れたASICでの登録等、オーストラリア会社法及びその他関連法令で定められた諸手続きを履行しなければなりません。

そのため、一般的には、支店形態の方が、現地法人設立に比べ時間等を要することも多く、実務的には現地法人形態をとることが多いように思われます。

 

 

 

以上、今回は、オーストラリア進出形態につき、オーストラリア会社法の規定に触れながら簡単にご説明しました。

 

 

 

本内容は、執筆当時の情報をもとに作成しております。また、本コラムは、個別具体的な事案に対する法的アドバイスではなく、あくまで一般的な情報であり、そのため、読者の皆様が当該情報を利用されたことで何らかの損害が発生したとしても、かかる損害について一切の責任を負うことができません。個別具体的な法的アドバイスを必要とする場合は、必ず専門家(オーストラリア現地法に関する事項は、オーストラリア現地の専門家(弁護士等))に直接ご相談下さい。

 

弁護士 高橋 健

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