オーストラリア経済の動向-世界で最も長く経済成長を続ける国?-
【オーストラリア経済の動向-世界で最も長く経済成長を続ける国?-】
本サイトのトップページ「オーストラリアについて」でもご案内しましたが、オーストラリアは、過去25年間、連続してGDPのプラス成長を続けてきました。
そして、今年の6月にオーストラリア統計局が発表した今年の1月~3月期のGDPは、前年比で0.3%増となり、これで26年間、継続して景気後退(※ここでいう景気後退とは、実質国内総生産(GDP)が2四半期以上続けて対前期比で減少した場合のことをいいます。)していないこととなりました。
そして、この記録は、過去にこれまで最も長く景気後退しなかった期間(103四半期)を保有していたオランダのそれと並んだと言われています。
確かにこの間、ニュースで見るオーストラリア経済は、(もはや終息したと言われていますが)「資源ブーム」や「住宅投資ブーム」など、景気のよいものが多かったように思います。
また、今年の4月、オーストラリアを訪問した際に見た日本食レストランに溢れんばかりのお客さんが入っていた光景などを振り返っても、オーストラリアの景気の良さは個人的にも感じたところでした(勿論、そこにはオーストラリア国内における日本食ブームの影響もあったと思いますが)。
今回のような景気後退の有無から「経済成長を続ける国」と即断してしまってよいのか等、一定の慎重な検討も必要かと思いますが、それでもオーストラリア経済が統計データ上、主要先進国の中でも類を見ない好景気であることは間違いないかと思います。
日本経済が苦しんでいる中、なぜここまでオーストラリアは継続的な好景気を記録できたのか、素朴な疑問を抱きました。そこで今回、私なりに色々とオーストラリア経済に関連する記事を読んでみたところ、一般的には、以下のような事情がこれまでの好調なオーストラリア経済を支えてきた要素として紹介されていました。
①中国経済の影響
⇒オーストラリアは、近年、中国から最も多くの投資を受けている国の一つであり、中国の経済成長の恩恵を受けていると言われています。
②銀行等の金融機関の規制緩和、それに伴う金融機関内部での競争原理や効率化の動き
③オーストラリア政府が1983年にとった変動相場制による影響
④労働条件の決定に際し柔軟性を確保するなど労働市場を改革し、失業率の低下等を実現・維持
⑤移民政策等による国内人口の増加
⇒オーストラリアは、積極的な移民政策等により先進国の中でも高い人口増加率を誇り、オーストラリア統計局の報告によれば、2300万人であった2013年からわずか3年後の2016年には人口2400万人を突破しました。
そして、オーストラリア統計局では、2016年12月時点で、2050年の人口を3800万人と予測するなど、この人口増加は今後も進むと予想しています。
⑥資源・鉱山ブーム
⇒ニュース等でよく目にする、オーストラリアにおける資源・鉱山ブームです。
オーストラリアでは、2000年代に入り、アジアからの需要の上昇に伴い、石炭や鉄の価格が高騰しました。
その結果、この鉱山投資は、2012年には、オーストラリアの経済成長の約半分を生み出したとまで言われています。
⑦近年の観光事業の上昇
以上のような要素が相まって、この26年間、世界経済が金融危機(例:2008年リーマンショック)に瀕した時も、オーストラリアは、大きなインパクトを受けることなく、経済成長を続けることができた、と言われています。
以上に加えて、今年5月、オーストラリア政府は、上記⑥の資源ブームが過ぎ去った今、新たにインフラ整備による景気刺激を試みることを打ち出しており、広大な国土をつなぐ道路や鉄道の整備を今後10年間で実施していく考えを示しました。
他方で、「オーストラリア経済は、景気後退していないとはいえ、中国ビジネスへの依存体質が強いため、潜在的な不安定さを抱えている」、「資源ブームは終息し、次の経済成長エンジンが必要」、「今回の前年比0.3%増というGDP伸び率は、実は2009年以降で最低の伸び率である」など、今後のオーストラリア経済は、決して楽観視できるものではないようです。
しかし、上記⑤の人口増加率一つとっても、まだまだ経済成長が期待できる余地はあるのではないかと思いますし、その他、例えばオーストラリアに進出している日系企業が、大企業に加え中小企業も約7割が黒字、という統計データ(アジア・オセアニアの諸外国の中では5番目に高い数値。詳しくは、コラム「オーストラリア訪問記」参照。)もオーストラリア経済の好調さを物語っているといえるでしょう。
オーストラリアをこよなく愛する者としては、今後もオーストラリア経済が益々成長し、日本でも「中国」や「東南アジア」進出・投資だけでなく、「オーストラリア」進出・投資がより一層注目されることを願ってやみません。
本内容は、執筆当時の情報をもとに作成しております。また、本コラムは、個別具体的な事案に対する法的アドバイスではなく、あくまで一般的な情報であり、そのため、読者の皆様が当該情報を利用されたことで何らかの損害が発生したとしても、かかる損害について一切の責任を負うことができません。個別具体的な法的アドバイスを必要とする場合は、必ず専門家(オーストラリア現地法に関する事項は、オーストラリア現地の専門家(弁護士等))に直接ご相談下さい。
弁護士 高橋 健