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オーストラリア遺言・相続法務(4)-オーストラリアでの遺言書の作成方法-

弁護士 髙橋健

 

1.オーストラリアで遺言書を作成する場合とは

 

 

まず,オーストラリアの法律に従った遺言書は,どのような場合に必要となるでしょうか。

 

 

前回のオーストラリア遺言・相続法務(3)でお伝えしたことです。

 

そう,日本人の方で,オーストラリア国内に不動産や金融資産などを有しておられる場合は,基本,日本の法律に従った遺言書(公正証書遺言等)を作成していようが,オーストラリアの法律に従った遺言書を書くべき(厳密には,書いておいた方が安全),ということでした。

 

 

したがって,オーストラリアに資産を有する方は,たとえ現在,日本に居住していたとしても,基本的にオーストラリア法に従った遺言書を作成しておくべき,ということとなります。

 

 

では,具体的に,オーストラリア法に従った遺言書を作成しようとする場合,どのようにして作成すればよいのでしょうか。

 

 

2.オーストラリア法に従った遺言書の作成方法(概要)

 

 

オーストラリア法に従った遺言書を作成する場合,オーストラリアの相続法(Succession Act)や,その他関連法規で求められている方式に従って作成しなければなりません。

 

この点は,日本の民法が,遺言書の作成方式を厳格に求めていることと似ています。

 

 

ただ,日本と大きく異なるのが,オーストラリアでは,オーストラリアの弁護士によって信用力のある遺言書が作成できる点です。

 

 

ご承知の通り,日本で信用力の高い公正証書遺言を作成しようとすると,公証役場等で公証人が,当該遺言書が民法の定めに従って作成されたものであることを附記し,署名押印等しなければなりません。

つまり,日本の弁護士の面前で遺言書が作成され,かつ,それが民法の方式に従ったものであると弁護士が附記し署名押印したとしても,日本の民法の定める公正証書遺言にはなりません。

 

しかしながら,オーストラリアでは,オーストラリアの弁護士に依頼すれば,遺言書は作成可能であり,特に日本の公証役場のようなところに行ったり,日本の公証人のような方と別途面会したりする必要はありません。

 

 

当職も,先月のオーストラリア滞在期間中,業務提携先のオーストラリアの弁護士さんがオーストラリア法の方式に従った遺言書を作成する現場に,幸いにも何度か立ち会う機会を得ましたが,弁護士の面前で遺言者が署名し,また証人2名(このうち1名は弁護士)の署名もなされることで,遺言書が作成されていました。

 

誤解を恐れずいうと,日本の公正証書遺言の作成プロセスと比べると,比較的簡易な作成方法という印象を受けました。

 

 

勿論,実際に遺言書を作成するまでに,遺言者の意向を聴取し,また資産関係も調査して,最終的に遺言書の文案を確定させていくそのプロセスは,日本と同様,法的な専門知識をバックボーンに持ちつつ,適切かつ明瞭な文章を練り上げる作業であり,細心の注意を払う必要があります。

 

ただ,やはり遺言者の方に実際に公証役場に行っていただく手間や,また公証役場に支払う手数料のこと等を考えると,オーストラリア法に従った遺言書の作成方法は,日本と比べ,遺言者にとって使い勝手のよいものと思われます。

また,そのような使い勝手のよさも,オーストラリアは日本に比べ遺言書の普及率が高い(誰でも遺言書は作成すべきもの,という考えが広く浸透している)と言われている理由の一つなのかもしれません。

 

そして,弁護士目線でいうと,オーストラリアにおける弁護士の社会的信用力・役割は,日本のそれよりも高く,広いのだなと感じました。

 

 

3.まとめ

 

 

以上の通り,オーストラリア法に従った遺言書は,オーストラリアの弁護士に依頼し作成することが一般的です。

 

そして,日本人のオーストラリア弁護士資格を有する方であれば,当然,日本語で対応もしてくれますし,遺言書(英語)の日本語訳を作成してくれることもあるでしょう。

 

また当職の業務提携を結んでいるオーストラリア弁護士(日本人)であれば,セミナー等で年に数回,日本に一時帰国しており,その機会に日本国内で面談等を実施することにより,オーストラリアに行かずにオーストラリア法に従った遺言書を作成することも場合によっては可能です。

 

 

もしオーストラリア国内に資産を持ち,オーストラリアの弁護士に遺言書の作成依頼をされたい方は,よろしければ当職までご相談下さい。

 

 

 

本内容は、執筆当時の情報をもとに作成しております。また、本コラムは、個別具体的な事案に対する法的アドバイスではなく、あくまで一般的な情報であり、そのため、読者の皆様が当該情報を利用されたことで何らかの損害が発生したとしても、かかる損害について一切の責任を負うことができません。個別具体的な法的アドバイスを必要とする場合は、必ず専門家(オーストラリア現地法に関する事項は、オーストラリア現地の専門家(弁護士等))に直接ご相談下さい。

 

弁護士 髙橋 健

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