オーストラリア遺言・相続法務(7)-Affidavit-
1.Affidavit(宣誓供述書)が必要となる場合
今回は、オーストラリアでの遺言・相続手続きに関連し、時折必要となるAffidavitという書類について、お話しようと思います。
以前、本コラムの「オーストラリア遺言・相続法務(3)」において、日本とオーストラリア、両方に資産を有している日本人の方においては、実務上、両国でそれぞれ遺言書を作成しておくことがベストである、というお話をさせて頂いたかと思います。
しかしながら、現実には、日本人の方が、オーストラリアの資産も対象とした日本の公正証書遺言しか作成していない(オーストラリア法にしたがった遺言書は作成していない)状態でお亡くなりになり、相続が開始するケースをよく目にします。
この場合、日本国内の資産に関する相続手続きは、その公正証書遺言を用いて進めることが可能ですが、オーストラリア国内の資産に関しては、それほど簡単には進まないことが一般です。
その一つとして、オーストラリア国内において、Probate手続き(遺言書が存在することを前提とした相続手続き)を実施する際、オーストラリアの裁判所に対し、日本の公正証書遺言を提出し、それの法的有効性を説明することが必要となります。
そこでオーストラリアの裁判所への説明資料として作成されるのが、Affidavit(あるいはCertificate)という書類(英文)になります。
2.Affidavitとはどのような書面か?
では上記1でご説明したオーストラリア国内の相続手続きの中で必要となるAffidavitとは、誰が、どのようにして作成するのでしょうか。
このAffidavitの基本的な役割は、「オーストラリアの裁判所に対し、当該公正証書遺言が、日本法にしたがって作成された法的に有効なものであること」を証明する点にあります。
そのため、そのようなことを証明できる人物がAffidavitを作成することになりますが、通常は、日本国の法律家(弁護士等)が作成することが多いといえます。
次に、日本国の弁護士が作成するとして、どのような手続きを踏んで作成する必要があるか、ですが、基本的には、日本の弁護士が作成し、それに作成者として署名をするだけでは足りず、それを日本国内の国際公証人か、オーストラリア国の弁護士の面前で作成・署名し、それをそれらの公証人やオーストラリア弁護士が認証等することが必要となります。
当職がAffidavitの作成をお手伝いする場合は、実際にその後オーストラリア国内で相続手続き(Probate)を実施してもらう提携先のオーストラリア弁護士(日本人)の面前で作成し、当該弁護士の先生が証人となり当該Affidavitに(証人として)署名等をしていただく方法をとることが一般です(但し、このような方法をとるためには、一定の要件を満たしている必要があります)。
このAffidavit作成の段階で、オーストラリア弁護士の先生に関与していただくことで、その後スムーズにオーストラリアの裁判所で受け入れてもらえるAffidavitを作成することが可能となります。
上記のようなAffidavitの作成、オーストラリアの裁判所への提出を経て、オーストラリア国内でのProbateが進んでいき、最終的には日本の公正証書遺言を用いてオーストラリア国内の相続手続きを完了させることが可能となります。
当事務所では、このようなAffidavitの作成とその後必要となるオーストラリア国内の相続手続き(Probate)につき、オーストラリア現地の提携弁護士と協力しながら対応させて頂きます。
3.補足―その他のCertificateについて―
以上、オーストラリア国内での相続手続きに必要となるAffidavitの概要をご説明しました。
このような日本の法律家(弁護士等)が海外の裁判所や政府機関向けの証明書を作成するケースは、ほかにもいくつかあります。
例えば、海外に長年居住していた関係で、海外で年金をかけていた日本人の方が、日本に帰国後、その海外の国に年金の支払いを求める場合、パスポートや運転免許証などの身分証明書のコピーを当該海外の政府機関に提出することがあります。
この場合、海外の政府機関からは、このコピーが原本と同一であることを証するCertificateの提出を求められることがあります。
そして、そのCertificateは、第三者に作成してもらう必要があり、かつそれを作成できる者は日本の弁護士等に制限されていることが一般的です。
そのため、当職においても、そういったCertificate(英文)を作成するお手伝いをさせて頂いております。このような原本証明のためのCertificateの作成業務については、オーストラリア以外の国(カナダ等)のものも経験しております。
このようなCertificateの作成業務につきましても、どうぞお気軽にご相談下さい。
本内容は、執筆当時の情報をもとに作成しております。また、本コラムは、個別具体的な事案に対する法的アドバイスではなく、あくまで一般的な情報であり、そのため、読者の皆様が当該情報を利用されたことで何らかの損害が発生したとしても、かかる損害について一切の責任を負うことができません。個別具体的な法的アドバイスを必要とする場合は、必ず専門家(オーストラリア現地法に関する事項は、オーストラリア現地の専門家(弁護士等))に直接ご相談下さい。
弁護士 髙橋 健