スポーツ仲裁の利用状況
第1 スポーツ仲裁の利用状況
公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(The Japan Sports Arbitration Agency:JSAA)のHPには、2003年4月にJSAAが設立されて以降の各年度の全部又は一部の仲裁判断集が公表されています。
年度ごとの事業報告等によると、仲裁(及び調停)の利用状況は次のとおり推移しているようです。
※年度は4月1日~3月31日
① 申立人・相手方の競技団体双方が紛争を仲裁により解決することに合意し、審問が行われ仲裁判断が下された事案(判断された年度でカウント)
・2003年 【3件】(ウェイトリフティング、テコンドー、身体障害者水泳)
・2004年 【2件】(馬術、障害者陸上競技)
・2005年 【1件】(ローラースケート)
・2006年 【1件】(セーリング)
・2007年 【0件】
・2008年 【1件】(カヌー)
・2009年 【2件】(軟式野球、綱引)
・2010年 【3件】(ボウリング2件、障害者バトミントン)
・2011年 【3件】(ボート、アーチェリー、馬術)
・2012年 【1件】(軟式野球)※その他取下げ件数は1件
・2013年 【8件】(ボディビル、水球、テコンドー、ボッチャ、スキー、卓球、自転車)※その他取下げ件数は16件
・2014年 【4件】(ホッケー、自転車、卓球、テコンドー)
② 申立人が競技団体を相手方としてJSAAに紛争解決を依頼してきたが、競技団体の仲裁合意が得られず、仲裁(or調停)手続に進めなかった事案
・2003年 【2件】
・2004年 【1件】
・2005年 【1件】
・2006年 【0件】
・2007年 【3件】※調停申立を含む。
・2008年 【2件】※内1件は調停に応じなかった事案。内1件は最終的に裁判を選択。
・2009年 【1件】※調停申立の意向であった事案
・2010年 【0件】
・2011年 【2件】
・2012年 【3件】※内1件は特定仲裁合意に関する事案、内1件は調停事案。
・2013年 【5件】※内1件は特定仲裁合意に関する事案、内1件は調停事案。
③ 申立人側にはJSAAへ仲裁申立の意向があったものの、競技団体側が仲裁に応じるという形式を避け、申立人と直接話し合って和解またはそれに準ずる形で解決に至ったもの
・2003年 【2件】
・2004年 【1件】
・2005年 【4件】
・2006年 【1件】※他の紛争処理機関を利用して解決
・2007年 【2件】
・2008年 【1件】※調停申立の意向であった事案
・2009年 【1件】
・2010年 【1件】※調停申立の意向であった事案
④ その他競技者側が競技団体のした決定を不服としてJSAAに対し、仲裁を申し立てようとする意図を持って電話・e-mail等による問い合わせ、または直接事務所へ相談に来たもの
・2003年 【4件】
・2004年 【8件】
・2005年 【9件】
・2006年 【9件】
・2007年 【6件】
・2008年 【19件】
・2009年 【20件】
・2010年 【19件】
・2011年 【18件】
・2012年 【37件】
・2013年 【39件】
⑤ 調停申立てが行われ、調停が行われた事案
・2007年 【1件】※被申立人の応諾待ちの状態である事案
・2008年 【2件】※2件とも和解で解決
・2009年 【1件】
⑥ JADAからの日本ドーピング防止規程に基づく競技者に対する申立てにつき、「ドーピング紛争に関するスポーツ仲裁規則」による仲裁が行われ、仲裁判断が下された事案
・2008年 【1件】
・2009年 【1件】※2008年からの継続事案(自転車)
⑦ 競技者からの日本ドーピング防止規程に基づくJADAに対する申立てにつき、「ドーピング紛争に関するスポーツ仲裁規則」による仲裁手続中の事案
・2008年 【1件】
・2012年 【1件】
⑧ 競技者の申立てに対し、相手方競技団体の自動受諾により、「スポーツ仲裁規則」による仲裁が受理されたが、その後当事者が取下げた事案
・2010年 【2件】
※件数のまとめ方は2003年度以降の各事業報告書に依りますが、分類項目について年度によって異なるため、バラつきのある表記となっています。平成27年7月6日時点においては、「2013年年度事業報告書」に掲載されている「仲裁・調停等事業及び事前相談への対応」一覧表が、各件数をまとめた最新の表となります。
第2 まとめ
JSAAは2003年4月に設立された組織のため、裁判所と比較することはそもそも困難ではあるものの、JSAAに対する紛争解決の相談件数の増加からすると、有用な紛争解決機関としての認識が徐々に高まってきている状況と見受けられます。
仲裁判断についても、平均的に年3件程度はなされており、機会を改めて、仲裁事案及び判断の内容についてご紹介をしていきたいと思います。
以上
(弁護士 武田雄司)