弁護士特約の射程範囲

交通事故の損害賠償請求について弁護士に委任することを検討されている方が、ご自身がご加入されている自動車保険に付いている「弁護士費用特約」の利用を希望されていたのですが、保険会社から今回は特約の対象から外れるという説明を受けてお困りになって当事務所にご相談されました。

「弁護士費用特約」とは、自動車事故で相手方に対して損害賠償請求をする際に、弁護士に対して支払う報酬金が保険金として支給されるという特約です。

(※保険会社によって特約の名称や具体的な内容などは異なりますので、ご加入の保険会社にあらかじめご確認下さい。)

 

ご相談者は、業務中の運転で交通事故にあわれたのですが、自動車保険の約款で業務中の交通事故については特約の対象外だと明記しているというのが保険会社の説明だったようです。

 

さて、ご相談者が加入されている保険の約款を確認したところ、概ね次のような内容でした(該当箇所についてわかりやすいように簡略化しています。)。

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下記の者が弁護士費用を負担した場合に弁護士費用特約の対象となる。

①記名被保険者

②記名被保険者の配偶者

③記名被保険者の同居親族及び別居の未成年子

④上記①②③以外のもので契約車両に搭乗していた者

⑤上記①②③④以外の者で、①②③が運転する契約車両以外の車両に搭乗していた者。

但し、①②③が業務の為に運転していた場合は除く

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つまり保険会社の説明は、今回の交通事故が⑤の「業務の為に運転していた場合」に該当するために特約の対象外だというものだったようです。

しかし、⑤は、①②③④の規定に該当しない場合について定めたものなので、記名被保険者が業務の為に運転していた場合は①に該当して特約の対象になるはずです。

 

ご相談者にそのようにアドバイスして、再度保険会社に確認されることをお勧めしたところ、後日、保険会社から特約が利用できるという説明を受けられたそうです。

このように、保険の約款は複雑な規定もありますので、ご不明な点があれば弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

(弁護士松本政子)