交通事故と傷病手当金

健康保険被保険者が病気や怪我によって仕事をすることができなくなり、勤務先から十分な報酬が受けられない場合に「傷病手当金」という制度があります(健康保険法第99条)。

 

自動車を運転している方が単独で交通事故をおこしてしまった場合(自損事故)、相手方からの保険金支払いが受けられませんので、ご自身で傷病手当金の申請が必要になることもあります。

 

傷病手当金の支給日額は、支給開始日以前の12カ月の各月の標準報酬月額(ボーナス含む)の平均月額を30日で割って算出した金額の3分の2です。

 

傷病手当金が支給されるためには、次のような条件を満たす必要があります。

①業務外の事由による病気や怪我の療養のために休業していること

②仕事に就くことができない状態であること

③連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

④休業した期間について給与の支払いがないこと

 

上記条件について注意すべき点を見てみましょう。

①について、業務又は通勤による怪我は健康保険ではなく労災保険の給付対象に該当します。

③について、仕事に就けない状態が3日間連続する必要があります。3日が断続的である場合は条件を満たしません。

④について、給与がまったく支払われない場合のみならず、一部の給与が支払われた場合であってもその金額が傷病手当金の金額よりも少ない場合はその差額が支給されます。

 

上記条件を満たす場合、傷病手当金は支給が開始した日から最長1年6か月間支給されます。

もし、1年6か月の期間の途中で出勤したとしても、再び欠勤した場合は1年6か月の期間内であれば傷病手当金は支給されます。

(弁護士 松本政子)