人身事故の届出をせずに自賠責請求する場合

交通事故で怪我をしたけれど、その怪我が比較的軽かった場合、加害者の人から「物損扱いにしてほしい」と頼まれるなどして、人身事故としての届け出をしないまま処理をする方が意外に多くいらっしゃいます。このようなケースでは、加害者が加入する自賠責保険に被害者請求をするときに注意すべきことがあります。

 

自賠責保険に被害者請求の手続きをするとき、様々な資料を準備する必要がありますが、必要な書類の一つに警察が発行する「交通事故証明書」があります。

この証明書には、交通事故が発生した日時や場所、被害者加害者の情報などが記載されており、さらにその事故が人身事故であったか物損事故であったかという点も記されています。

 

自賠責保険会社に保険金請求をする場合、交通事故で怪我をしたことを理由に、治療費や交通費などを請求するわけですから、交通事故証明書が人身事故ではなく物損事故になっている場合は、「なぜ、人身事故で届出をしていないのか」という事情について記載した「人身事故証明書入手不能理由書」というものを自賠責保険会社に提出する必要があります。

この理由書は、原則、加害者に署名押印をもらわなければなりませんので、事故後加害者と連絡がとれなくなったなど、加害者の協力が得られない場合は、被害者が、自賠責保険会社に加害者が署名押印に協力してくれないという事情を説明しなければなりません。

 

このように、人身事故の場合に人身事故の届け出をして物損扱いにした場合、自賠責保険の請求手続きにおいて加害者の協力が必要になることがありますのでご注意ください。

 

(弁護士 松本政子)