学習費・保育費・学費等

交通事故による損害の一つとして,学習費や保育費,学費等が問題となることがあります。

 

この損害は,いくつかのタイプのものに分かれ,

①受傷による学習進度の遅れを取り戻すための補習費

②留年したことにより新たに支払った,あるいは無駄になった事故前に支払済みの授業料等

③被害者が子の養育・監護をできなくなったことにより負担した子供の保育費等

などがあります。

 

いずれも,被害の程度,内容,年齢,家庭の状況に照らして必要性が認められる場合には,実費相当額が損害として認められます。

 

たとえば,

 

・①について,高校2年生の長期入院(110日間)による学力不足を取り戻すための6ヶ月分の家庭教師費用35万円を認めた例(神戸地判昭和52・11・28交民10巻6号1660号),

 

・②について,大学4年生の女性につき,事故で傷害(頚椎捻挫,背部打撲,頚部挫傷等)を受けたことから卒業試験を受けられずに留年することになったとして,留年に伴う1年間の授業料120万8000円を認めた例(名古屋地判平成15・5・30交民36巻3号815頁)や,症状固定時56歳の会社員男性が受傷(顔面打撲,右肘打撲,頭部打撲等)し後遺障害(頚部痛等,14級9号)が残った場合に,受傷のため単位が取れず卒業が延びた半年間の学費相当分31万5290円を認めた例(千葉地判平成24・8・28自保ジャーナル1882号137頁),

 

・③について,症状固定時41歳の男性会社役員が事故により入院したが,妻も末期がんで入院中のため,長女(10歳)の近親者による監護費用として,泊まりで1日4000円の119日分,通いで1日2000円の31日分の合計53万8000円とともに長女のための家政婦代として平日1時間1200円,休日1時間1500円,交通費500円の計算で合計294万3550円を認めた例(名古屋地判平成20・12・10交民41巻6号1601頁)

 

などがあります。

 

事故により同様の損害が生じているという場合は,これらの損害も忘れずに相手方に請求して行く必要があります。