様々な損害項目について

-損害項目について

 

 交通事故による損害は,治療費,慰謝料,休業損害,後遺障害による逸失利益といった,一般的によく論じられるもの以外にも,様々なものが考えられ,交通事故との因果関係が認められ,支出の必要性と相当性のあるものであれば,損害として認められることとなります。以下では,紹介されることの少ない損害項目について,いくつか言及したいと思います。

 

-ペットの保管料

 

 被害者がケガを負ったことで,ペットなどの飼育ができなくなり,他に預けることがありますが,裁判例の中には,このための費用を損害と認めたものがあります。

 

 例えば,大阪地判平成20・9・8交民41巻5号1210頁においては,被害者である男性が右下肢会報粉砕骨折などの傷害を負った場合に,被害者と家族(妻,3人の子)がペット(ミニチュアダックスフント)をペットホテル業者に預けることを余儀なくされたとして,128日間の預かり費用金32万円を損害として認めています。

 

-旅行のキャンセル料等

 

 交通事故の発生によりケガを負った被害者やその近親者が予定していた旅行をとりやめることがありますが,そのような場合の旅費のキャンセル料が損害として認められています。

 

 例えば,横浜地判平成23・6・16自保ジャーナル1866号47頁は,婚約者と一緒に被害者の両親に会うために予約していた航空券及び婚約者が被害者と一緒に行く予定にしていたコンサートのキャンセル料合計金6万円余を損害として認めています。

 

-引越料等

 

 被害者の死亡や,重度の後遺障害が残存したことにより,従前居住していた居宅を引き払い,あるいは,転居する必要が発生することがあり,同時に,家財の整理などのための費用が支出されることがあります。これらの費用も,損害として認められています。

 

 例えば,

・併合3級(記憶障害等=5級,左腓骨仮関節=8級9号,左足関節可動域制限=12級7号)の後遺障害を負った女性について,介護が必要な状態となり,姉の自宅の近所に転居して姉の世話になる必要があったとして,引っ越しのための費用として金45万円を損害と認めた事例(東京地判平成19・3・1交民40巻2号336頁)

・男性・給与所得者の死亡事故について被害者宅の賃借アパートの家賃割引サービスに関する早期解約違約金4万7000円及び引越費用金5万円を因果関係のある損害と認めた事例(東京地判平成23・3・30交民44巻2号495頁)

・男性会社員が,事故により妻が死亡し,自らは左上肢の障害やPTSDが発症したとされた場合に,1人暮らしではなく実家に引っ越すのは相当であるとして,転居費用金5万2500円とともに,新婚であった被害者夫妻の家財道具を保管するために実家の敷地に設置した倉庫の費用金30万円を認めた例(仙台地判平成24・3・27自保ジャーナル1883号59頁)

等があります。