被害者の心構え
ひとつ前の知恵袋で,「立証責任は被害者にある」という厳しい現実についてご説明しました。
そうすると,被害者は,たとえ何も悪くなくても,事故に巻き込まれた以上,立証責任を果たさなければ損害賠償は獲得できない,という厳しい現実に直面しま す。被害者であるからと言って,加害者側や加害者側の保険会社が手取り足取り被害を回復してくれるということはなく,被害者側が,事故の被害を証明する責任を負うのです。
日本 は,行政でも民間でもサービスが相当に行き届いており,不正義は許されてはならないという一般的な良識もあるので,交通事故に遭って100%悪くない被害者になったとき,被害者の方は,「こんな不正義がまかり通るはずがない」と怒ったり,嘆いたりする気持ちになります。そして,それは全く間違っていないと,至極まっとうなお気持ちだと思います。
しかし,実際には,被害者に「立証責任」があるので,事故に遭ってしまった被害者 は,「降りかかる火の粉は自分でふりはらわないといけない」「不運に対しては自分で立ち向かわなくてはならない」「加害者に頼るのではなく,この不運を自 分でひっくり返し,被害をできる限り回復なくてはならない」といった「心構え」や「意気込み」を持つ必要があるのです。交通事故の被害者は,物理的な痛みや精神的苦痛 から,鬱状態になられることも多く,そのような被害者の皆さんに,「意気込み」を持ってくださいというのは大変心苦しいのですが,被害者自身に立証責任が あるというのが現在の法制度の大前提である以上,被害者は,立証責任を果たさなければ,損害を回復できません(損害賠償を請求することはできません)。したがって,被害者の皆さんは,「信じられないほどの不運」「不正義」に見舞われてしまったということを認識したうえで,誰かがなんとかしてくれると放置して待つのではなく,自分自身でその不運や不正義を,できる限りひっくり返すという姿勢になる必要があるのです。
そして,そのような被害者の「立証責任」を助けるのが,我々弁護士の仕事ということになります。我々弁護士にご依頼をいただければ,まさに,我々弁護士が,「被害の立証」をお手伝いし,被害者の方の立証責任の負担を大幅に軽減することができるということになります。ご依頼者は,そのために,我々弁護士に弁護士費用をお支払いになることになりますが,被害者の保険に弁護士費用特約が付いていた場合は,弁護士費用は被害者側の保険で支払われることになりますし,弁護士費用特約が付いていなかった場合は,弁護士費用の一部は相手方に請求できる可能性もあります。
被害者の方は,立証責任を負担するので,「不運には自ら立ち向かわないといけない」という心構えを持っていただく必要があり,しかし,そのためのサポートは,我々弁護士がしっかりとさせていただく,ということとなります。