裁判上の和解における弁護士費用の相場

交通事故の裁判の「判決」で認められる弁護士費用は,「認容された損害賠償額の1割」というのは,ほぼ確定した裁判実務の流れです。

 

では,裁判上の和解において,弁護士費用はどのように考慮されるかというと,大阪,京都の運用では,「だいたい,遅延損害金と合わせて,損害賠償額の1割程度」が相場です。訴訟事件では,だいたい交通事故発生後1年程度は経過してから裁判上の和解が勧告されますから,遅延損害金は年利5%で計算されますので,弁護士費用はだいたい損害の5%程度認めてくれるということのようです。

 

しかし,これは結構適当な話でして,弁護士費用や遅延損害金以外の項目は,その時点(和解勧告時点)の証拠に照らして,「判決ならだいたいこうなりますよ」という金額を和解案に盛り込むのが通常なのですから,弁護士費用や遅延損害金も,「今判決書いたらだいたいこんな感じになりますよ」ということで,遅延損害金であればきちんと年利5%。弁護士費用もきちんと10%を乗せる運用にすべきだと思います。そのようにしても,「判決になれば,さらに時間がかかって,遅延損害金がもっと増えるわけだから,今和解しておいた方が得ですよ」と言えるわけですので,「和解の幅」は十分に確保できて,加害者の保険会社に対しても一定のメリットをアピールできるはずです。わざわざ,弁護士費用を半額で提示するというのは,明らかに「雑」で「加害者に一方的に有利な」和解の運用と言わざるを得ません。

 

といっても,愚痴や文句を言っても始まりませんので,そのような裁判所の運用を前提に,和解に応じるかどうかを検討すべきということになります。その際には,「判決になったら弁護士費用や遅延損害金は確実に増える」という見込みと,「判決になった場合は,その他の争点でどれだけこの和解案が下ブレする(つまり,減額される)おそれがあるのか」という点をプロの目できちんと見極めて,和解に乗るか,断るかを判断することとなります。

 

弁護士 牧野誠司