訴訟を提起すると,自賠責の手続は止まります

あまり知られていないことなのですが,自賠責の後遺障害の等級認定を進めているときに,訴訟を提起した場合,「訴訟を提起されているなら,裁判で決めるべきことなので,自賠責での等級認定は行いません」ということで,自賠責の等級認定の手続は止まってしまいます。

 

また,自賠責の手続において「被害者の通院が,事故と因果関係がない」と判断されたので,被害者が自賠責の手続で異議申し立てを行った際にも,それと並行して訴訟を提起したら,「事故と通院の因果関係は訴訟で明確になるので,自賠責の手続では認定いたしません。」ということで,自賠責の認定手続は止まってしまいます。

 

要するに,訴訟で「争点」なっていることについては,自賠責手続では判断しないということになるようですので,「まずは自賠責で早期に認定を取ることを優先させたい」という場合は,訴訟提起を遅らせるというのも一つの選択肢となります(とはいえ,消滅時効などの関係で,訴訟を急がないといけないときもありますが)。また,後遺障害の等級については,自賠責で認められていないものを訴訟で認めるのは感覚的には難しいというのが一般的な裁判所の心理であり,その観点から,まずは自賠責,あるいはその異議申し立ての手続で等級の認定を取りたいと考えた場合も,訴訟を控えるというのが一つの選択肢となります。

 

弁護士 牧野誠司