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オーストラリアビジネス法務(5)-店舗等のリース契約-

弁護士 髙橋健

 

1 オーストラリアのリース契約には、必ず弁護士が関与する?

 

 

今年の9月にオーストラリアの業務提携先の法律事務所さんを訪問した際、オーストラリアのオフィスや店舗などのリース契約書(賃貸借契約書)を目にする機会がありました。

 

オーストラリアでは、ビジネスでオフィスや店舗などを借りる際、オーナー側、賃借人側、どちらにも弁護士が入り、契約交渉及び締結を行うのが一般的です。

 

日本では、オフィスの賃貸借契約を締結する際に弁護士が契約交渉の代理人として就任することはむしろ稀ですので、このオーストラリアの実務慣行は、日本と大きく異なります。

 

それでは、原則的に弁護士が関与するオーストラリアでのオフィスや店舗等のビジネスリース契約とは、どのような流れで締結され、またその中で弁護士は、どのような役割を担っているのでしょうか。

 

 

2 オーストラリアビジネスにおけるリース契約締結の流れとは

 

 

(1)オーナーから賃借人へのオファーレター(Offer Letter)

 

 

まず、賃借人側が不動産会社等を通じて候補物件を探し当て、オーナー側との接触を開始した後(ここまでは、基本的に日本と変わらないといえます)、通常は、オーナー側から賃借人に対し、オファーレターという書面が出されます。

 

オファーレターとは、まさにその名の通り、オーナー側から、賃借人側に対し、当該物件の賃貸借を申し出るための書面ですが、ポイントとしては、このレターには、一般的に、比較的詳細にオーナー側の希望する契約条件(賃料や賃貸期間、その他特約として求めたい事項等)が記載することが多い、という点です。

 

 

このオファーレターがオーナーから賃借人側に提出された場面から、弁護士が賃借人側の代理人に就任し、その代理人弁護士を通じて、オーナー側とオファーレターに記載された条件面を交渉することがあります。

 

他方で、この時点では弁護士が入らず、賃借人自らがオファーレターの内容を確認し、その内容に承諾してしまうことも、少なからずあるようです。

ここで承諾をしてしまうと、その後、そこから契約条件を変更することは一般的に難しいと考えられていますので、賃借人は、このオファーレターの時点から弁護士に依頼することが一般的に推奨されています。

 

 

(2)オーナーから賃借人へのDISCLOSURE STATEMENT

 

 

上記オファーレターに加え、オーナー側からは、賃借人に対し、DISCLOSURE STATEMENTという書類が送られてくることがあります。

 

特に店舗のリース契約の場合には、そのようなDISCLOSURE STATEMENTが出されることが多いようです。

 

 

このDISCLOSURE STATEMENTには、オーナー側の希望する契約条件がかなり詳細に記載されることが一般的です。

 

賃料や契約期間などの基本的な契約条件は勿論のこと、その他にも、例えば、当該物件が商業施設の一区画(店舗)であるような場合は、その商業施設全体のルールや、賃借人側で遵守しなければならない事項等が詳細に書かれていたりします。

 

 

また、例えば、今回のリース契約の締結に際して要したLegal Costs(弁護士費用等)の負担などについても、記載されていることがあります(これは、オファーレターに記載されていることもあります)。

 

そして、その際、たまに「オーナー側のLegal Costsは、賃借人側で負担する」などと記載されていることがありますので、注意が必要です(勿論、賃借人側としては、まずはLegal Costsは、オーナー側・賃借人側、それぞれで負担する、という内容で再提案することになろうかと思います)。

 

 

(3)契約交渉及び締結

 

 

上記(1)のOffer Letter、(2)のDISCLOSURE STATEMENTの開示があった後は、賃借人側の弁護士と、賃貸人側の弁護士との間で、細かな契約交渉が行われます。

 

そして、その交渉の結果、条件面で合意に達すれば、正式にリース契約を締結することとなります。

 

 

なお、オーストラリアの不動産価格は、この間、ずっと高騰した状態が継続しているようで、その結果、賃料についても、かなり高額となっています。

 

特にシドニー中心街などは、日本では考えられないような賃料で契約がなされており、しかも、1年毎に、賃料が数パーセント増額していくような契約内容になっていることも散見されます。

 

この、毎年賃料が数パーセント増額する条項は、それほど珍しくなく、そのため、このような条項を一切削除させる要望は、オーナー側が受け入れない可能性がありますが、ただ、その増額するパーセンテージをいくらとするか、については、交渉の結果、当初オーナー側が求めていた数字から変更されるケースもあるようです(ここでも、当然、賃借人側の弁護士が、オーナー側の弁護士と交渉することとなります)。

 

賃料自体がかなり高額ですので、例えば1~2%変わっただけでも、総額の賃料額は、かなり増減するものと考えられます。

 

 

3 最後に

 

 

オーストラリアビジネスにおける店舗等のリース契約の一般的な流れは、上記の通りです。

 

オーストラリアに進出し、ビジネスを展開するうえでは、オフィスや店舗等のリースは避けては通れないものと考えられ、その際には、現地の不動産業者や弁護士の協力が不可欠といえます。

 

当事務所では、日系企業向けのリース物件の選定や契約交渉・締結業務を日々行っているオーストラリア現地の弁護士や不動産業者をご紹介することが可能です。

 

また、必要に応じて、そのオーストラリア現地の弁護士等と協力して、案件に対応することも可能です。

 

 

もしオーストラリア現地の賃貸物件の選定や、契約交渉等のための弁護士を探すことでお困りの方がいらっしゃれば、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。

 

 

 

本内容は、執筆当時の情報をもとに作成しております。また、本コラムは、個別具体的な事案に対する法的アドバイスではなく、あくまで一般的な情報であり、そのため、読者の皆様が当該情報を利用されたことで何らかの損害が発生したとしても、かかる損害について一切の責任を負うことができません。個別具体的な法的アドバイスを必要とする場合は、必ず専門家(オーストラリア現地法に関する事項は、オーストラリア現地の専門家(弁護士等))に直接ご相談下さい。

 

弁護士 高橋 健

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