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オーストラリア遺言・相続法務(5)-オーストラリア人が日本国内で遺言書を作成する方法ー

弁護士 髙橋健

1.オーストラリア人の方が日本国内で遺言書を作成できるのか

 

弊所では、主に日本人の方を対象に、日本及びオーストラリア双方に資産を有している方を対象として、その法務面でのお手伝いをさせていただいておりますが、時折、日本国内に居住し、日本国内に資産を有するオーストラリア人の方の遺言書(公正証書遺言)作成業務をお手伝いさせていただくこともあります。

 

オーストラリア人の方が日本に居住し、不動産等の資産を形成するに至った理由は、無論さまざまですが、やはり配偶者が日本人であるから、という場合が多いでしょうか。

 

 

いずれにしても、日本に居住する、日本国籍を有さないオーストラリア人等の外国人が、日本国内で、法律上有効な公正証書遺言を作成することは可能なのでしょうか。

 

答えは、YESです。

 

その根拠としては、日本の遺言の準拠法に関する法律第2条があげられます。

 

同条では、行為地法、本国法、住所地法、常居所地法、不動産の所在地法のいずれかが日本法に該当すれば、日本法による有効な方式の遺言が認められるとされています(ただし、遺言の成立や効力、その取り消しについては、いわゆる法の適用に関する通則法という別の法律で定められていますので、注意が必要です)。

 

 

もっとも、オーストラリア人の方が日本の公証役場で公正証書遺言を作成する場合、いくつか日本人の場合と異なる部分がありますので、以下、それらの注意点をご説明します。

 

 

2.外国人の方が日本国内で公正証書遺言を作成する場合の注意点

 

 

まず形式的な部分でいうと、公証役場に提出する資料として、通常のものに加えて、在留資格カードなど外国国籍の方特有のものが求められます。

 

 

そして、手続面で重要になるのは、当該オーストラリア人の方が日本語をほぼ問題なく理解できる能力を有していれば別段、そうでない場合は、遺言書作成当日、通訳する方に同行してもらう必要があります。

 

この通訳人の方は、特に何らかの資格を有している必要はないのですが、「法律英語を通訳する必要があること」+「公正証書遺言に自己の名前等が通訳人として記載されること」等から、実際上、確保することが結構難しいです。

 

当職の経験上は、やはり渉外法務に精通している弁護士等、法律英語に詳しく、かつ他人様の公正証書遺言に自己の名前等が掲載されることに職業柄、それほど抵抗感のない方が最適かと思っております。

 

なお、当然ながら、通訳人への報酬も別途必要となります(報酬金は、通訳人毎に異なります)。

 

 

最後に遺言の内容面ですが、まず今回の遺言で対象とする遺産を特定する点が重要となります。

 

通常、日本に居住しているとはいえ、オーストラリア人の方は、日本国内に加え、オーストラリア国内にも遺産を有していることが多いです。

 

そのため、もし日本国内で作成する遺言書が、特に対象とする遺産を「日本国内」等に限定していなければ、オーストラリア国内の遺産にもその効力が及んでしまうことが考えられます(資産所在国の法律に基づいた遺言書を作成すべき点は、「オーストラリア遺言・相続法務(3)」をご参照ください)。

 

したがって、「日本国内の資産は日本国内法に従った遺言書、オーストラリア国内の資産はオーストラリア国内法に従った遺言書で」という方針をとるのであれば、日本国内の遺言書には、その対象を日本国内の資産に限定する旨の規定を定めておく必要があります。

 

 

3.まとめ

 

 

以上、ごくごく簡単ではありますが、オーストラリア人の方が日本国内で公正証書遺言を作成する場合の注意点を記載しました。

 

 

弊所では、こういった日本国内に居住するオーストラリア人の方の公正証書遺言の作成業務も経験しておりますので、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。

 

 

 

本内容は、執筆当時の情報をもとに作成しております。また、本コラムは、個別具体的な事案に対する法的アドバイスではなく、あくまで一般的な情報であり、そのため、読者の皆様が当該情報を利用されたことで何らかの損害が発生したとしても、かかる損害について一切の責任を負うことができません。個別具体的な法的アドバイスを必要とする場合は、必ず専門家(オーストラリア現地法に関する事項は、オーストラリア現地の専門家(弁護士等))に直接ご相談下さい。

 

弁護士 髙橋 健

 

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