「訴訟促進等に関する特例法」による遅延損害金法定利率について

第1 訴訟促進等に関する特例法(以下,「特例法」といいます。)について

韓国では,民法上の法定利率は5%(民法379条),商法上の法定利率は6%(商法54条)と定められています。これは,いわゆる債権法改正により,法定利率が3%(日本民法404条2項。ただし,3年毎に改定される変動制(同条3項・4項))前の日本の民法・商法の規定と同じです。

日本では,売買代金や貸金について,訴訟を提起して裁判上で請求する場合も,遅延損害金の利率は同じです。ところが,韓国では,特例法により,裁判上での請求の場合は,遅延損害金の法定利率は,12%(2019年6月1日より)とされています。

これは,「訴訟の遅延を防止し,国民の権利・義務の迅速な実現及び紛争処理の促進を図ること」(特例法1条)を目的とするものです。

同法3条1項では,「金銭債務の全部又は一部の履行を命ずる判決(審判を含む。以下同じ)を言渡す場合において,金銭債務不履行による損害賠償額算定の基準となる法定利率は,その金銭債務の履行を求める訴状又はこれに準ずる書面が債務者に送達された日の翌日からは,年100分の40以内の範囲で「銀行法」による銀行が適用する延滞金利等経済与件を考慮し大統領令で定める利率による。」と定められています。

そして,大統領府令である「訴訟促進等に関する特例法第3条第1項本文の法定利率に関する規定」により,現在の法定利率が12%とされています。

第2 日本における訴訟での適用の可否

問題は,上記特例法の規定が,日本の裁判所における訴訟でも適用されるかどうかですが,これについて判断がなされている判例は見当たりません。しかし,①当事者間の契約において,韓国法を準拠法とすることに合意している場合,②被相続人が韓国籍である場合等,韓国法が準拠法となる場合には,韓国法が適用されることになるため,特例法も適用対象となるものと思われます。

以上より,遅延損害金について大きな違いが生じる可能性があるという点からも,準拠法を日本法か韓国法(あるいは他の国の法)にするかについては,慎重に検討すべき事項といえます。

*外国判決の執行判決請求の事案(日本の裁判所で韓国法に基づき請求を行うという事案ではなく,韓国での認容判決について,原告が,被告に対し,日本の裁判所で強制執行することを許すことを求める事案)ではありますが,
東京地判平成30年5月29日は,
「我が国おいても,本件各外国判決に係る請求のような不法行為に基づく損害賠償債務について,年20%の割合による遅延損害金を約定で定めることが許されないものではないから,本件各外国判決の上記年20%の割合による金員の支払を命ずる部分が,我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないと直ちにいうことはできない。そうすると,本件各外国判決は「日本における公の秩序又は善良の風俗に反しない」もの」と認められる,と判断しています。

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