日本酒の韓国への輸出について(2)

1.はじめに

 

前回、日本酒の韓国への輸出に関して、その概要や留意点について、一部ご紹介いたしました。今回も、引き続き、ジェトロ農林水産・食品部、国税庁酒税課「日本酒輸出ハンドブック-韓国編-」2018年3月(以下、「ハンドブック」といいます。)を参考資料として、日本酒の韓国への輸出の概要についてご紹介したいと思います。

 

2.日本酒の消費場所と売れ筋商品

 

韓国における日本酒の消費の中心は、居酒屋や日本料理店などの外食時で、家庭での消費量はごくわずかのようです。なかでも、居酒屋をはじめとする日本式レストランは、価格が手頃で、若い世代を中心に人気が高く、日本酒の一大消費場所となっているとのことです(ハンドブック6ページ)。

 

日本酒の価格は韓国では非常に高く、飲食店では日本の小売価格の3~3.5倍で販売されています。量的に最も売れているのは安価な900mLの紙パック酒で、ハンドブック発行時の2018年3月現在、十数銘柄の紙パック酒が流通しているとのことです。日本式レストランで提供されている日本酒の価格帯は、1パック3万~4万ウォン台で、一般的な居酒屋ではこのタイプが最も多く消費されているとのことです(ハンドブック6ページ)。

 

日本酒・焼酎のポータルサイト(「酒仙人」)では、上記の状況について、以下のように言及されています(https://bit.ly/2WQ5Ed5)。

「韓国では手頃な価格で飲める紙パック日本酒も人気で「がんばれ!お父ちゃん!」という銘柄を結構見かけます。この「がんばれお父ちゃん(900ml)」も酒販店では、1万5000~1万8000ウォン(日本円で約1500~1800円)、居酒屋では2万5000~4万5000ウォン(日本円で約2500~4500円)となり、他酒類から比べると決して安いとは言えません。このように韓国で日本酒の価格が高くなるのは、複雑な流通の仕組みと店舗での利益率の高さが原因となります(韓国での日本酒の税率は68%)。今後、日本酒を普及させるためには、この流通の仕組みの改善と、各店舗における良心的な値付けが課題となるでしょう。

現在、韓国内では日本酒が飲める和食系の店舗が30、000店以上ありますが、リーズナブルな居酒屋業態が多く、主要顧客である20~30代の若者からすると、日本酒は値段が高く、飲むとしても安価の紙パックに入ったものが主流になります。但し、色々な日本酒を飲んでみたいというニーズは高くなっているので、これからは「ただ安い」、「ただ高い」だけでなく、価格競争力のある日本酒の開発と普及が鍵になることでしょう。」

 

3.販売形態(ハンドブック7ページ)

 

日本から輸入される日本酒の販売店舗としては、大きく①マート・量販店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、②飲食店、③百貨店の3つに分類できます。

①マート・量販店や②飲食店は、輸入業者または卸売業者から仕入れて販売しますが、③百貨店では、輸入業者または卸売業者がテナントとして入り、販売するのが一般的とのことです。

百貨店のうち、新世界百貨店と現代百貨店は、輸入業者がテナントとして入店しているため、当該輸入業者が輸入した商品しか販売できません。テナント料は売価の35%以上で、販売員の人件費はテナントの輸入業者が負担しています。

ここは注意すべき点ですが、酒類の通信販売は禁止されており、店頭で注文を受けても、運送の規制により、宅配便で配送することができません。そのため、各店舗の販売可能なエリアは限られているのが現状です。

 

3.輸出の際の留意点

 

(1)日本から韓国の小売店に届くまでの時間(ハンドブック10~11ページ)

 

日本から韓国への輸出では、韓国での通関で多くの時間がかかり、特に、新規取扱い商品では、食品検査に1~10日かかります(2回目以降は2日程度)。また、放射線検査にも1~2週間要します。通関をパスした後の、卸売業者や小売店への移動はスムーズに行われるようです。

 

(2)商品の表示

 

輸入業者は、韓国の「食品等の表示・広告に関する法律」(ハンドブック発行よりも後の2019年3月14日に施行されました)第4条により、主商標ラベル、または補助商標ラベルに以下の内容を表示しなければなりません。

①製品名、内容量、および原材料名

②営業所の名称及び所在地

③消費者の安全のための注意事項

④製造年月日、流通期限や品質保持期限

(日本で食品が流通される際に使われる「賞味期限」は、韓国では法的に通用できるものではないため、「流通期限」または「品質保持期限」として表記しなければなりません(ハンドブック12ページ))

⑤その他消費者に該当する食品、食品添加物や畜産物に関する情報を提供するために必要な事項として、総理令で定める事項

 

上記⑤の「総理令」として、「食品等の表示基準」(2020年1月3日施行)が定められています。同基準では、表示すべき事項として、①製品名、②種類、③営業所(輸入者)の名称(商号)及び所在地、④製造年月日(ただし、製造番号や瓶詰め年月日を表示した場合には、製造年月日を省略することができます)、⑤内容量、⑥アルコール度数、⑦原材料名、⑧容器及び包装の材質、⑨品目報告番号、⑩成分名と含有量、⑪保管方法等について表示すべきとされています。表示方法についても、同基準に詳細に記載されています。

 

ハンドブック12ページによれば、アルコール飲料の容器およびそのキャップは、食品衛生法の規定による食品衛生検査機関の試験分析の結果、使用適格判定を受けたものに限り使用できます。アルコール飲料のビンおよび缶には、納税証票を含む商標ラベルを貼付することとされています。ただし、コーティングビンおよび紙パックに商標を印刷したものを使用する場合、商標名が同一ならば同一商品とみなされ、商標ラベルの貼付は省略できます。アルコール飲料の商標名は、商標法第4条に規定されている酒類分類および第7条の「商標登録できない商標」に従い、消費者に対し酒類区分を混同させないようにする必要があります。

 

(3)輸入関税その他諸税

 

ハンドブック13ページによれば、日本酒(HSコード:2206.00.20.10)には、以下の税金がかかるとされています。

① 関税:CIF価格の15%

※基本税率は30%ですが、「特定国家との関税協定による国際協力関税の適用に関する規定」により、15%の税率が適用されます。

② 酒税:〔CIF価格+関税額〕の30%

③ 教育税:酒税額の10%

④ 付加価値税:〔CIF価格+①関税+②酒税+③教育税〕の10%

 

※HSコードについては、必ず現地税関に最新の番号を確認する必要があります。また、税率は毎年変わる可能性があるため、World Tariff(米国FedEx Trade Networks社が有料で提供している世界の関税率情報データベース。ジェトロと同社との契約で、日本の居住者は誰でも、ユーザー登録により、同社のサイトから無料で利用できます) 等で、最新値をご確認願います。

 

4.終わりに

 

以上の通り、日本酒の韓国への輸出についての留意点をご紹介いたします。次回以降も、日本酒に限らず、韓国法務に関する様々な情報をご提供させていただきます。

 

記事⼀覧へ戻る