韓国個人情報保護法メモ③~個人情報処理方針の樹立・公開義務について
第1 はじめに
今や多くの事業者のウェブサイト等で公表されているプライバシーポリシーですが、日本の個情法上は、プライバシーポリシーの策定自体を直接義務付ける規定はありません。他方、韓国の個情法では、第2以下で述べるように、「個人情報処理方針」の樹立・公開が義務化されています。今回はざっくりとその内容を確認したいと思います。
第2 韓国個情法第30条
1 個人情報処理方針の樹立及び公開義務(同条第1項及び第2項)
韓国個情法第30条は、以下の通り、個人情報処理者に、個人情報処理方針の樹立及び公開の義務を課しています。
このうち、「8. その他個人情報の処理について大統領令で定めた事項」としては、個情法施行令第31条第1項に、①処理する個人情報の項目、②個人情報の安全性確保措置に関する事項が挙げられています。
その他にも、「個人情報保護方針作成ガイドライン」(2020.12 個人情報保護委員会・韓国インターネット振興院。以下、「ガイドライン」といいます。)では、個情法の他の規定等に基づき、個人情報処理方針に定めるべき事項として、以下の事項を挙げています。ガイドラインは、こちらの一覧よりダウンロード可能です。
https://www.pipc.go.kr/np/cop/bbs/selectBoardList.do?bbsId=BS217&mCode=D010030000
・個人情報処理方針の変更に関する事項
・個人情報の閲覧請求を受付・処理する部署
・情報主体の権益侵害に対する救済方法
・個人情報を処理する場合仮名情報処理に関する事項(該当する場合のみ作成)
・国内代理人を指定した場合国内代理人の氏名(法人の場合その名称及び代表者の氏名)、住所(法人の場合営業所所在地)、電話番号及びメールアドレス(該当する場合のみ作成)
・追加的な利用・提供に関連する施行令第14条の2第1項各号の考慮事項に対する判断基準
・映像情報処理機器運営・管理に関する事項(個情法第25条第7項に基づく‘映像情報処理機器運営・管理方針’を個人情報処理方針に含めて定める場合)
・その他個人情報処理者が個人情報処理基準及び保護措置等に関して自律的に個人情報処理方針に含めて定める事項
ガイドラインでは、各項目に関する解説や、記載例が掲載されています。各項目に関する詳細は、次回以降、また別途ご紹介できればと思います。
2 個別の契約との優劣関係(同条第3項)
情報主体と個人情報処理者との間で締結した契約中に、個人情報の処理に関する内容が含まれており、当該内容が個人情報処理方針の内容と異なる場合は、情報主体側に有利なものを適用するとされています。
3 作成指針の策定等(同条第4項)
当該規定に基づき、2022年3月3日には、「個人情報処理方針作成指針」が公開されています(https://www.privacy.go.kr/a3sc/per/inf/perInfStep01.doよりダウンロード)。詳細を確認できていませんが、前述のガイドラインも同様に本条項に基づくものかもしれません。
同指針によれば、「この指針は、個人情報処理者が「個人情報保護法」(以下「法」)第30条の「個人情報処理方針」を個人情報処理に関する手続き及び基準等に関する事項を透明に作成及び公開するよう支援する目的で制定」され、「個人情報処理方針を法第3条による「個人情報保護原則」に基づいて作成することにより、個人情報処理方針が形式的ではなく、情報主体の権利を保障するための本来の趣旨に適合するように作成および公開されるように、具体的な事例および作成ガイドラインを提案する」ものであるとされています。PDFで116ページのボリュームで作成指針が解説されているものであり、今後どこかでご紹介したいと思います。
第3 おわりに
以上の通り、韓国の個情法では、個人情報処理方針の樹立・公開が法律上の義務となっており、個人情報保護委員会でも、作成指針を公開するなど、積極的な施策が取られています。こちらのリンク先(https://www.privacy.go.kr/a3sc/per/inf/perInfStep01.do)では、個人情報保護委員会が「個人情報処理方針新規作成」というサービスを提供しており、個人情報処理方針の名称を入力後、該当する事項にチェックを入れる等することで、個人情報処理方針のひな形を生成することができます。日本の個人情報保護委員会と比べると、かなり積極的な施策が取られていることがわかります。
次回以降のどこかで、個人情報処理方針に関する韓国個情法の具体的な規定について確認してみたいと思います。