事故直後に被害者がとるべき対応の要点

  • 車両事故
  • 武田 雄司

■ポイント

1.事故直後の情報収集は非常に重要

2.どんな事故でも警察へ通報・届出を

3.自己の任意保険会社に対する速やかな連絡

 

第1 はじめに

交通事故に遭った時、被害者としてどのような対応を取るかによって、その後の紛争の大小、解決までの道のりに影響が出ることがありますが、紛争になる論点は、往々にして「どんな事故だったのか」という点です。

そのため、後日、「どんな事故だったのか」という点に疑義が生じないように又は疑義が生じたときに自らの主張を立証するために、事故直後の情報収集が非常に重要になります。

交通事故に遭って非常に動転していることもあるでしょうし、怒りに震えることもあるとは思いますが、まずは冷静になり、2記載の情報収集を心がけましょう(取得方法は、考えられる方法を列挙しただけであって、加害者との関係上、そのような手段が必ずしも取れないことがあることは当然です。)。

平行して適時に警察へ通報し、最後に、自己が任意保険に付保している場合には、当該保険会社へ連絡しましょう。

 

第2 情報収集

1.加害者の情報収集

・運転者の氏名、住所、連絡先(携帯番号や家の電話番号、FAX番号等)

・加害車両のナンバープレート

・運転者と所有者が異なるか否かの確認し異なる場合、加害車両の所有者の氏名、住所、連絡先、運転者と所有者の関係

・同乗者の有無、いる場合の氏名・住所、連絡先

・加害者の直後の予定

※表向きは、事故現場での対応の時間が確保できるか確認する目的でもありますが、加害者の直後の予定(目的地や到着予定時間等)を確認しておくことで、事故に繋がる運転をしていたことを推測できる情報を取得できるかもしれません。

 

■取得方法

・加害者へのインタビュー⇒録音できる場合は録音し、かつ、現場でメモを取る等、可能な限り記録化することが望ましい。以下インタビューで取得する情報については同じです。

・加害者の運転免許証の確認

・加害車両の車検証(自動車検査証)の確認

・自動車損害賠償責任保険保険証書の確認

 

2.保険会社の情報収集

・加害車両にかけられている自動車損害賠償責任保険(=自賠責保険)の保険会社、契約者、契約番号、

・加害車両並びに運転者及び所有者にかけられている自動車保険(=任意保険)の保険会社と、契約者、契約番号、保険内容

 

■取得方法

・加害者へのインタビュー

・自動車損害賠償責任保険保険証書(自賠責保険証書)の確認

・自動車保険保険契約書(任意保険契約書)の確認

 

3.事故状況に関する情報収集

事故直後から事故状況について認識の違いがあることももちろんありますが、事故直後は特に事故状況に争いがなかったはずなのに、日が経つにつれ、損害額が明らかになってくると、事故状況に争いが生じるようになるということは珍しくありません(衝突した位置や角度、センターラインを超えていたのか否か等あらゆる点で認識が異なる可能性があります。)。

そこで、事故直後においては、事故状況を自らの記憶も含めて記憶が鮮明な内に記録化しておくことが望ましいところです。

・事故直後の状況の写真及びビデオ

※可能な限り正確な事故状況を記録するため、転倒したバイクや自転車はもちろん、加害車両の位置等も動かさずにありのままの状況を撮影することが望ましいです。

・第三者の目撃者の確保

・第三者の目撃者が確保できた場合、目撃者が認識する事故状況

・自車及び/又は加害車両にドライブレコーダーが搭載されている場合はデータの確保

・後続車や対向車の運転者の氏名、住所、連絡先、ドライブレコーダーの有無の確認、ドライブレコーダーのデータの確保

・事故現場付近の監視カメラの有無・所有者の確認

・加害者が認識する事故状況

・加害者の同乗者が認識する事故状況

・被害者の同乗者が認識する事故状況

 

■取得方法

・事故直後の状況の写真撮影及びビデオ撮影

・加害者へのインタビュー

・目撃者へのインタビュー

・後続車や対向車の運転者へのインタビュー

・加害者の同乗者へのインタビュー

・被害者の同乗者へのインタビュー

・ドライブレコーダーの記録媒体の確保

・監視カメラの設置場所やプレートがついている場合はその記載内容の確認

・自動車保険保険契約書(任意保険契約書)の確認

 

第3 警察への通報・届出

警察への通報・届出は言うまでもなく極めて重要です。怪我をした場合、いわゆる人身事故の場合はもちろん、怪我がなく物損だけが発生した場合でも、可能な限りその場で警察へ通報し、届出をしましょう。

軽微な事故の場合には特に、加害者が通報を嫌がったり、被害者としても面倒な気持ちから警察への通報・届出をしないケースもあると思います。

しかし、警察への届出がなされなければ、保険会社へ保険金の請求をする際に必要になる「交通事故証明書」の発行を受けることができなかったり、ひどいケースでは、交通事故の発生すら加害者から争われるというケースも考えられ、被害者の救済が非常に困難になってしまう等、その場の面倒な気持ちが引き起こす不利益は非常に大きなものです。

 

加害者には、通報義務が課せられていますが(道路交通法第72条第1項)、加害者が通報しない場合には、是非とも速やかに警察に通報をするようにしましょう。

なお、後日警察へ届出を出すことは可能ですが、このようなケースでは、そもそも事故が発生したことも含め、加害者との紛争が大きくなることを覚悟しておく必要があるでしょう。

 

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「道路交通法」

(交通事故の場合の措置)

第七十二条  交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

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第4 自己の任意保険会社への連絡

事故発生後、自己の任意保険会社へ直ちに連絡しましょう。

自分がどのような保険に入っているのか正確に理解している方は少ないと思いますので、まずは事故の概要を伝える共に、自分がどのような保険(特約を含む)に入っているか、今回の事故でどのような保険が使えるのか確認をしましょう。

 

保険会社への連絡は、自分の保険を使うための第一歩ではありますが、実は、約款上は、保険会社への連絡は保険契約者等の義務でもあります。

当該通知義務違反に対しては、それによって保険会社が損害を被った場合には、保険金額から差し引かれることもありますので、通知を怠らないようにしましょう。

 

■任意保険会社への通知事項(保険会社毎に表現は異なる可能性がありますが概ね以下の情報を通知するように約款上記載されています)

・【直ちに通知】事故発生の日時、場所及び事故の概要

・【遅滞なく通知】

①事故の状況、被害者の住所及び氏名又は名称

②事故発生の日時、場所又は事故の状況について証人となる者がある場合は、その者の住所及び氏名又は名称

③損害賠償の請求を受けた場合は、その内容

 

初歩的な対応は以上ですが、自動車保険以外にも、クレジットカードや住宅ローンに付随してかけられている保険がある等、日頃意識していないところでも怪我に対する保険がかけられていることもあります。

このような保険についても是非確認し、せっかく保険をかけていたのに請求し忘れた!なんてことがないよう、注意が必要です。

 

以上

(弁護士 武田雄司)