主婦の休業損害
交通事故の被害者の方が,専業主婦あるいは家事とアルバイトを兼業している兼業主婦さんであった場合,交通事故によってしばらくの間家事もろくに出来なかったのに,相手方の保険会社から,「収入が落ちたわけではないからお金を支払うことはできない」などといって,休業損害の賠償(けがによる減収分を補てんする賠償)が認められない,という説明を受ける場合があるようです。
しかし,主婦あるいは主夫などの,家事従事者については,「家事に従事できなかった」ことによる損害賠償が広く認められており(最高裁昭和50年7月8日判決もこれを認めています),現在では,実際には金銭的な収入を得ていない,あるいは収入を得ていても多くはない家事従事者についても,「女子平均賃金程度の収入があったものと仮定して」,休業損害や,後遺障害逸失利益としての損害賠償を認める運用が「定着」していると言われています。
交通事故の被害者に対しては,一般的には,まだまだ法による保護が薄い(立証責任の壁など,被害者の負担が大きすぎるし,被害者に対して不当な結果になることが多い)と思うことが多いですが,この,「家事従事者については女性の平均賃金で収入を仮定計算する」という実務の運用については,めずらしく,被害者に優しい運用であるなと思っております。
具体的には,家事従事者であって,収入がゼロの被害者であっても,概ね金300万円程度の年収があったものと扱われることが多いのです。
したがって,家事従事者の方も,「収入がなかったから休業損害は支払えません」などという説明は真に受けずに,家事ができなくなったことによる損害賠償をしっかり請求することをおすすめいたします。