反則行為を犯した際の対応
■ポイント
1.住所・氏名が不明な場合、逃亡するおそれがある場合には、交通反則告知制度は利用されないため、交通反則告知制度を利用するためには、まずは告知を受け、青切符を受領すること。
2.青切符受領した翌日から7日以内に「仮」納付を行えば必要な対応は終了。
3.法律上、出頭義務はない。
4.「仮」納付をしない場合(かつ、出頭しない場合)、通告書送付費用を負担する必要が生じる。
5.通告を受けた日の翌日から10日以内に反則金を納付する必要がある。
6.支払期限の末日が土曜日、日曜日又は祝日であれば、その翌日が支払期限となる。
7.不服や異議がある場合には、反則金を納付せず、刑事手続で争う他ない。
第1 はじめに
例えば、「スピード違反で警察に停止を求められてしまった!」そんな時、どのように対応すべきでしょうか。
第2 反則行為を犯してしまった際の対応
1.まず停まる
厳密には停止すべき義務を定める規定はありませんが、停止しなかった場合には、反則行為となるべき事実の要旨等の告知をすることができず、交通反則通告制度が利用されないまま、原則どおり刑事手続が進められてしまいます(道路交通法第130条第1項)。
そのため、交通反則通告制度を利用するためには、まずは停止する必要があります。
※住所・氏名が不明な場合、逃亡するおそれがある場合には、交通反則告知制度は利用されません。
2.告知を受ける
反則行為となるべき事実の要旨等について書面(いわゆる「青切符」とよばれるものです。)を受領し、告知を受けます(道路交通法第126条第1項)。
3.仮納付
青切符を受領した日の翌日から起算して、7日以内に反則金に相当する金額について仮納付を行うことができます(道路交通法第129条第1項)。
「仮」とされている理由ですが、後述のとおり、「反則金」は、正式には、警察本部長(警視総監又は道府県警察本部長)が反則行為及び反則者を認定し、理由を示して反則金の納付を書面で通告する方法が採られており、青切符を受領した段階では、正式に「反則金」として確定していないことがその理由です。
仮納付をした場合、公示による通告後、反則金を納付したものとみなされ、その後、具体的に対応すべきことはなく手続は終了します(道路交通法第129条第2項)(もちろん出頭も不要です。)。
4.通告
「反則金」は、正式には、警察本部長(警視総監又は道府県警察本部長)が反則行為及び反則者を認定し、理由を示して反則金の納付を書面で通告することによって、「反則金」として確定します(道路交通法第127条第1項)。
通告は原則として「書面」を交付してなされるものですが、仮納付をしている者に対しては、書面を交付(郵送)せず、公示通告(青切符記載の公示通告の場所で表記の告知年月日と告知書番号を氏名にかえて掲示して行われることになります。)という方法で通告がなされます(道路交通法第129条第2項)。
この他の通告方法として、反則者が反則行為が行われた地を管轄する警察署に出頭することで、通告書を直接受領する方法で通告を受けることも想定されており、法律上は、出頭し、直接交付する方法を主たる方法として想定しているものの、出頭するか否かは反則者が任意であって、強制されることはありません。
5.納付
通告を受けた日の翌日から10日以内に反則金を納付する必要があります(道路交通法第128条第1項)。
反則金の納付の効果として、「通告の理由となった行為に係る事件について、公訴を提起されず、又は家庭裁判所の審判に付されない」という効果が発生します(道路交通法第128条第2項)。
※仮に10日以内の期限を経過した場合には、法律上は、公訴不提起等の効果は発生しないことから、理論的には期限後反則金を支払った場合でも公訴提起がなされる可能性がありますが、現実的にはそのようなケースで公訴提起がなされる可能性は考えにくいところです。
6.納付期限の特則
支払期限の末日が土曜日、日曜日又は祝日であれば、その翌日まで支払期限が延長されます(道路交通法第129条の2、道路交通法施行令第54条の2)。
7.仮納付と通告後の納付の差異
仮納付した場合、通告のための書面は郵送されず、「通告書の送付に要する費用」について通告を受けることはありません。
一方で、通告書の送付を受ける場合(仮納付をする場合及び出頭して通告書を受領する場合以外の場合)には、「通告書の送付に要する費用」についても納付すべき金額として通告されるため、わずかながらその分の金額が高くなるという差異が生じます。
第3 その他
反則行為に対して徹底的に争いたいと考える場合には、以上の納付手続を採らない結果、必然的に刑事手続が開始されることから、当該刑事手続において争うこととなります。
(なお、軽微な道路交通法違反事件については、検察官が必ずしも正式裁判を提起するとは限らないという実情はあるため、反則行為の存在は争わないものの、徹底的に支払わないという対応を取られるケースもあるようです。しかし、刑事手続の対応の負担や仮に微罪処分として起訴猶予となったとしても、交通事故はちょっとした不注意でも不可避的に発生することは十分あることを思うと、1回限り、反則金の支払いを免れることに、あまり大きな意味を持たせることは、却って将来に向けて大きなリスクを抱えることになることは十分に理解をする必要があると個人的には考えます。)
以上
(弁護士 武田雄司)