交通事故と違反点数

  • 松本 政子
  • 因果関係

交通事故で怪我をしているのに物損事故として警察に届け出をされたとおっしゃる方にその理由を尋ねると、「加害者から人身扱いにしないでと頼まれたからです。」と回答されることがあります。

人身事故と物損事故では、自動車運転過失致傷罪という犯罪が成立するかという点で大きく違いますが、それ以外にも違反点数の点で差が生じます。

 

違反点数とは交通違反をしたときに科される点数のことで、違反した内容に応じて点数が異なります。

違反点数が一定の点数に達したときは、一定期間の免許停止や免許取り消しなどの行政処分を受けることになります。

このような違反点数は、人身事故と物損事故で異なります。

 

人身事故を起こしてしまった場合、通常は「安全運転義務違反」として2点が科されます。

さらに被害者の怪我の程度に応じて3点~13点が加算されますし、死亡事故の場合は20点が加算されます。

 

一方、物損事故の場合は違反点数が加算されないケースがほとんどです。

そのため、一部の加害者は物損扱いにしてもらうことを強く望むのでしょう。

(もっとも、物損事故であったとしても警察に届け出をしなかった場合は「安全運転義務違反」として2点が科され、さらに「危険防止等措置義務違反」として5点が加算されてしまいます。)

 

このように、人身事故と物損事故では違反点数に差が生じますので、加害者から「人身扱いにしないでください。」と頼まれることがあるかもしれません。

しかし、本当は怪我をしているのに物損事故扱いにしてしまうと、正しい賠償が受けられなくなるおそれがありますのでご注意ください。

交通事故の届け出をするときは、被害の内容を正しく警察に申告することをお薦めします。

(弁護士松本政子)