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免許停止または免許取消のための意見の聴取手続

道路交通法104条1項は,相当長期の免許停止(免停)や,免許取消の処分をしようとする場合は,公開による意見の聴取を行わなければならない。」と定めており,同条の2項は,「意見の聴取に際しては,当該処分に係る者又はその代理人は,当該事案について意見を述べ,かつ,有利な証拠を提出することができる。」と定めています。
つまりは,重大な免停事案や,免許取消事案については,刑事裁判とは別に,行政手続きにおいても,「公開のプチ裁判」みたいなことをしなければならない,ということになっているわけです。これを,「意見聴取手続」と呼んでいます。
先日,当事務所の弁護士は,この意見聴取手続に,「代理人」として出頭しました。
この手続は,確かに,条文上は,「プチ裁判」なのですが,実際には,「お説教の場」という感じになっています。広い部屋の後方に,裁判の傍聴席のように椅子がたくさん並べられており,処分を受ける候補者の人たちがずらっと座らされています。そして,自分の順番が来たら前の方に呼ばれて,その人に対して警察官が2人一組で話を聞くようになっています。そこで,警察官が,処分を受ける予定の人から「意見を聴取する」のですが,実際には,「意見」を聞くというよりは,「なんで無免許運転したの?」「なんでこんなにスピード違反してたの?」「いや,自分が無免許かどうか分からん人に今後免許を渡すわけにはいかんでしょ?」「スピードがどれだけ出ているか気づかないような人に免許渡せないでしょ?」などと,詰問が始まるというのがほとんどで,なかには,「へらへらすんじゃない!」などと怒られている未成年者の人もいたりしました。ここに呼ばれてくる人は,何か「意見」があるというよりは,「自分の犯した違反行為になんら間違いはありません」と思っている人の方が多いので,結局,警察に対して伝えるべき「意見」というのはあまりなくて,警察からお説教をされて終わり,ということの方が多いのでしょうね。推定無罪の原則なんてまったく働いていないので,警察側も,もともとお説教モードですし,たしかに,これはお説教を受けないとマズいよね,というケースの方が多いのが実態です(免許停止処分を受けているのに運転して事故を起こしたとか,集団暴走行為をしたとか・・・)。
なお,意見聴取が行われる大部屋の中では,処分を受ける予定の人は,基本的には「番号」で呼ばれますが,しかし,意見聴取の際に違反行為が読み上げられる際には,名前が呼ばれたりするので,プライバシーの面では少々辛い場面もあります。
上記のように,ほとんどすべての事案で,この意見聴取の手続は,事実関係に争いがなく,お説教の場と化していますので,各人について5分から10分程度の意見聴取の手続の後,2時間程度で,もともとの予定通り,免許停止や免許取消の処分が言い渡されます。
しかし,私たちが代理をした案件は,まさに,私たち弁護士が違反事実の存在自体を争い,この道路交通法104条2項が予定している本来の「意見を述べ」「有利な証拠を提出する」という対応をいたしましたので,意見聴取の手続自体も20分程度はかかりましたし,その後,公安委員会は,その日の内には免取や免許停止の処分を行うことはせず,後日さらに慎重に再度処分を検討するものとされました。

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