スポーツ法務

a professional lawyer of sports

スポンサー契約のメリットと,注意事項

弁護士 牧野誠司

スポーツ法務の代表的な契約類型として,「スポンサー契約」というものがあります。

 

スポンサー契約とは,ざくっと大づかみで言えば,スポンサーがそのチームあるいはスポーツ選手に資金を提供する代わりに,種々の形で,そのチームや選手の公認のスポンサー(応援者)であることを公言することが許される,という契約です。

 

では,企業側がどういう目的でスポンサーになるかというと,文字通り,「応援したいから」「そのスポーツ,そのチーム,その選手のファンだから」という動機でスポンサーになる場合も多く,営利目的というよりは自己実現・趣味的な動機からスポンサーになられる場合もあります。その最たる形は,「後援会」といったものになります。

 

また,そのスポーツあるはチームが地域コミュニティの活性化につながる場合に,スポンサーとなることでそのスポーツ又はチームを応援して,コミュニティに貢献するという慈善目的という目的もあり得ます。

 

しかし,ほとんどの場合は,広い意味での「営利目的」でスポンサーになることが多く,「営利目的」の中身を分類してみれば,①認知度・想起回数アップによる売上増額を図ること,②企業イメージを上げて安定した収益を図ること,の2つに分けられるでしょう。このうち,今回は①について少し分析的に見てみます。

 

①認知度・想起回数のアップという点で言えば,スポーツの力は絶大な場合があります。スポーツチームやスポーツ選手は,芸能人と並んで,「人を惹きつける力」「人に憧れられる力」が非常に大きいツールですので,上手くハマれば,ただ単にテレビでCMをするような宣伝に比べて,非常に大きな効果を発揮することがあります。たとえば,スポンサー契約はなかった事例ですが,体操の内村航平選手がロンドン五輪でブラックサンダーというチョコレート菓子を食べているということが有名になったとたん,もともと何十億というブラックサンダーの売上がさらに4倍にもなったというニュースもありました。また,フジバンビという会社が発売している「黒糖ドーナツ」という製品は,女子サッカーのINAC神戸のユニフォームにスポンサーとして商品名が載せられていたことで,W杯でのなでしこの活躍をうけて,売り上げを26%も伸ばしたというニュースがありました。これも,何億円もの利益を生み出したケースです。

 

このように,活躍しているスポーツ選手やスポーツチームは,芸能人以上に世間の注目を浴びることがあることから,企業又は商品の認知度・想起回数のアップに非常に大きな効果を発揮することになります。

 

そのようなスポンサー契約の締結を,企業として検討する際に,企業が注意すべき事項としては,以下のようなものが考えられます。

 

①注目を浴びる可能性がある選手またはチームかどうか(今は注目を浴びていないが,浴びる可能性が見込まれるというのは,ハイリスクハイリターン案件ということになります。今注目を浴びている選手又はチームのスポンサーになる場合は,リスクは少ないけれど,高額の費用が掛かります)。

②その選手又はチームが注目を浴びる地域,年齢層,性別などが,その企業の商品やサービスとマッチしているか

③その選手又はチームのイメージと,その企業の商品やサービスとのシナジーがあるかどうか(野球製品を売る会社がサッカー選手のスポンサーになるのは,ウケ狙いでなければ,ダメですよね)。

④その選手又はチームが,大衆を敵に回すような危険性をはらんでいないかどうか。危険が顕在化したときに直ちに撤退+損害賠償できる契約になっているかどうか

⑤スポンサーとしては,企業名か商品名か,どちらを前面に出すべきか。

⑥スポンサー契約の契約書上,スポンサーの企業名または商品名の露出方法が,アピールしたい大衆にアピールできる効果的な方法になっているか。この点はスポンサー契約の中心的ポイントで,どのような形でその企業,商品,ブランド,サービスの名前を売りたいか,というイメージがきちんと契約書に詳細に書かれている必要があります。

⑦企業として,現在認知度・想起度を上げるべき時期にあるのか(すでに認知度が高い場合は,想起回数のアップに意味があるのかどうか),認知度が上がった際に,それに対応できる生産体制・サービス体制は整っているのかどうか。

⑧契約当事者が,きちんとその選手やチームの肖像権やユニフォーム等への露出のための権利を有しているかどうか,また,有していない場合の損害賠償や撤退のための条項が契約書に入っているかどうか。

⑨契約期間や,契約期間が非常に長期にわたる場合は思った通りの効果が出なかった場合の撤退のための条項が入っているかどうか。

⑩そのチーム,選手に競合他社がスポンサーをしていないか,また,そういった競合他社への浮気を排除できる内容の条項が入っているかどうか。

 

企業にとってはスポンサー契約は一大決心事項であるとともに,非常にやりがいと効果のある契約にもなり得ますので,スポーツ法務専門の弁護士等に相談されるのをおすすめいたします。

 

弁護士 牧野誠司

 

PROFILE

牧野 誠司

弁護士牧野 誠司

どのような事件に対応させていただくときでも、「牧野弁護士に依頼して良かった」と言っていただけるよう、そのご依頼者のために最良の解決を目指して努力させていただくことを日々の指針としています。

弁護士 牧野誠司 のその他の専門知識