スポーツ法務

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スポーツ仲裁って,誰が仲裁(判断)するの?

弁護士 牧野誠司

「スポーツ仲裁」という言葉自体は,かなり一般的に知られるようになってきましたが,このスポーツ仲裁を実施するのは裁判所ではなく,「公益財団法人日本スポーツ仲裁機構」という法人です。

 

じゃあ,この法人で,実際に仲裁人になるのは,誰?どんな人?という疑問が自然にわいてきますね。裁判でもそうですが,誰が判断者になるかということは非常に重要で,裁判官の能力や偏向の有無によって,事件の流れが全く異なってくるというのは,弁護士の世界でも常識ですから(話はそれますが,この「流れ」の違いに気づかずに,「自分がまっすぐに頑張れば必ず結果は出る!」と思っている弁護士はまだまだひよっこなのでしょうね。ちょっと前まで私もそうでしたが。)。

 

では,仲裁人はどんな人がなるかというと,実は,下記のURLで一般公開されています。

http://www.jsaa.jp/doc/arbitrators.html

 

私は驚いたのですが,ほとんどが弁護士ですね。そして,同じ弁護士である私の目から見たところ,やはり名のある大事務所の弁護士の先生方が多いことは多いものの,それ以外の,地域密着型で頑張っておられる先生方なども仲裁人候補者になっておられるようです。

 

もともと,弁護士という人種は,(あくまで「比較的」ですが)一般社会の常識や良識に従うことはあっても,組織(いわゆる「組織の常識」や「業界の常識」)には従わないよというへそ曲がりな傾向にありますので,この仲裁人候補者名簿を見て,私は,スポーツ仲裁機構の仲裁判断は,「業界の常識」にとらわれない,一般社会の常識というか,感覚に近しい判断が出される可能性が高いように感じました(誤解を恐れずに踏み込んでいうなら,それは,どちらかというと,団体よりも,そこに所属する選手や指導者などの個人にとって良い方向に進む可能性がある,ということです)。

 

もちろん,弁護士さんによっては,普段から大企業の相談に乗っていたり,あるいは,大企業からのお仕事を期待したりとかで,どちらかというと企業側・団体側・チーム側に有利な判断に傾いたりするかもしれませんが,仲裁人は3人選任されますし,その内の1人は各当事者が選べるということで,一方当事者に偏った判断がなされる可能性というのはかなり低いように思われます。

 

とはいえ,仲裁人候補者に弁護士が多いとなれば,私達の業界は狭いですから,やはり,仲裁の申し立ては弁護士に任せて,事前に仲裁人候補者についてのリサーチを実施して,能力が高く,公平な判断をしてくれそうな仲裁人が就任してくれるように努力するということが大切になりそうですね。

 

弁護士 牧野誠司

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牧野 誠司

弁護士牧野 誠司

どのような事件に対応させていただくときでも、「牧野弁護士に依頼して良かった」と言っていただけるよう、そのご依頼者のために最良の解決を目指して努力させていただくことを日々の指針としています。

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