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プロアマ規定って?

弁護士 牧野誠司

「プロアマ規定」という言葉は皆さんときどき耳にされることがあるかもしれません。

 

一般的には,「野球の世界で,プロとアマは交流してはいけません」あるいは,「一度プロに入ったら,プロ退団後も,学生野球を指導してはいけません」というルールだと理解されているのではないでしょうか。

 

この「プロアマ規定」ですが,正確には,①高校と大学野球のルールである日本学生野球連盟の憲章と,②社会人野球の登録規定の2つのルールに定められています(いました)。しかし,②の社会人野球の方は,プロ野球界から退団した人については既に社会人野球に参加してもOKという規定になっていますので,実質的に,現在のプロアマ規定というのは,①の高校と大学野球のルールである日本学生野球憲章のみとなっています。

 

では,その①高校,大学野球のルールである日本学生野球憲章の中の,「プロアマ規定」というのはどういう規定かというと,この知恵袋の一番下に引用している,14条と15条がそれにあたります。

 

この条文ですが,14条に,元プロ野球選手は,部員や指導者になれないと書いているのですが,こっそり,15条で,「許可を受ければ」「交流することができる」という規定を定めており,これによって,「許可を受けなければ元プロ野球選手は高校球児・大学球児と交流することすらできない」というルールを定めてしまっています。それによって,元プロ野球選手が高校で「講習会」をするのにも日本学生野球協会の許可が必要ということになりますし,その他の交流(たとえば,一緒に食事をする)といったことはOKなのかOUTなのか,ということは,良く分からない状態になっています。

 

このプロアマ規定の良し悪しは別にして,法律家の目から見ると,この「交流」の許可制の条項は,非常にあいまいな定め方になっており,とにかくもっと分かりやすく明確な規定に改定する方が良い,という結論にさほど異論はないと思われます。

 

 

第14条(学生野球資格)
プロ野球選手、プロ野球関係者、元プロ野球選手および元プロ野球関係者は、学生野球資格を持たない。
2 本憲章に基づき除名処分を受けた者は、学生野球資格を失う。
3 学生野球資格を持たない者は、部員、クラブチームの構成員、指導者、審判員および学生野球団体の役員となることができない。
第15条(学生野球資格を持たない者との関係の基本原則)
学生野球団体および加盟校は、日本学生野球協会の承認を受けて、学生野球の発展を目的として、次にかかげる活動を通じ、学生野球資格を持たない者(本憲章により除名処分を受けて学生野球資格を失った者を除く。)と交流することができる。

練習、試合など
講習会、シンポジウムなど
その他学生野球の発展に資する活動

前項の交流は、次の原則を遵守しなければならない。

2

学生野球が商業的に利用されてはならないこと。
部員、親権者またはその代理人は、プロ野球団体への入団、雇用などの契約の締結に関する交渉その他の行為について、全日本大学野球連盟または日本高等学校野球連盟が定める規則に従うこと。
学生野球団体、加盟校、野球部、部員、指導者、審判員または学生野球団体の役員は、学生野球資格を持たない者から交流に必要な実費以外の金品の提供を受けてはならないこと。
学生野球団体、加盟校、野球部、部員、指導者、審判員または学生野球団体の役員は、学生野球資格を持たない者に対して交流に必要な実費以外の金品を提供してはならないこと。

 

スポーツ法務 弁護士 牧野誠司

 

 

 

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牧野 誠司

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