プロサッカー選手の選手契約と,選手の肖像権など
プロサッカー選手の選手契約(所属チームと選手との契約)については,「年棒〇千万円」などと紙面を騒がすことはありますが,その契約条項そのものが開示されることは一般にはありません。
なので,こういった契約の詳細は,一般には秘密なんだと思っておられる方が多いと思います(弁護士である私もそう思ってました)。
しかし,Jリーグの選手の選手契約のひな形は,実は一般公開されているんですね・・・。このサイトです→http://www.jleague.jp/docs/aboutj/pdf_all_2015.pdf。
これは非常に興味深い規約,規則,契約集ですので,今後しばらくはこの規約,規則,契約集について説明などをしてきたいと思いますが,選手にとって最も関心のある所属チームとの選手契約のひな形はたったの2頁です。おそらく,この2頁に記載されていない細かな事柄(たとえば,チーム内のルール違反についてどのような罰金が科されるかといった事柄)については,チーム内で別途規則などが存在するものと推察されます。ただ,この契約書には,そういったチーム内の別途の規則に選手は従うという文言がないので,我々弁護士からすると,ちょっと不完全な契約書だなという印象が残るものであることは確かですね。
さて,この選手契約のひな形のうち,実務的に興味深いものとして,選手の肖像権の使用についての条項があります(第8条)。これによると,クラブ(チーム)側は,選手の肖像権等(写真や映像や氏名等)を原則として自由に商業的に利用できる一方で,選手側は,テレビ,ラジオ番組,イベントへの出演や,肖像の使用許諾(インターネットも含む),新聞・雑誌取材への応諾などについても,全て,クラブ側の承諾を得なければならないこととされています。これは,個人の肖像権に対する大きな制約であるとも思われますが,たとえば一人の選手が勝手にクラブのスポンサーのライバル会社の広告に勝手に出てしまった場合などを想定すると,クラブにおいて選手の肖像を管理すべき理由も確かにあるのであろうと思われます。そういった管理をするために,こういった条項が置かれているということだと思われます。
したがって,選手は,第三者との間でお金が発生するような契約をする場合は,原則として所属クラブにお伺いを立てなければなりませんし,選手にそういった契約をもちかける第三社やマネジメント会社の皆さんも,所属クラブがそういった契約を締結することを承諾しているかどうかを確認する必要があることになります。
(弁護士 牧野誠司)
PROFILE
弁護士牧野 誠司
どのような事件に対応させていただくときでも、「牧野弁護士に依頼して良かった」と言っていただけるよう、そのご依頼者のために最良の解決を目指して努力させていただくことを日々の指針としています。