スポーツ法務

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マネジメント業務とエージェント(代理人)業務

弁護士 牧野誠司

私も大好きな映画ですが,スポーツマネジメント,エージェントの仕事を描いた「ザ・エージェント」という映画があります。トム・クルーズ主演の映画です。

 

この映画では,トム・クルーズ演じる主人公が,スポーツ選手のエージェントとして活躍するわけですが,この主人公は,スポーツ選手の代理人として球団・チームや企業と交渉する仕事もしつつ,他方で,スポーツ選手の生活環境を整えたり,家族のケアをしたりしています。

 

つまり,この映画の中では,一人のエージェントが,「契約交渉代理人」としての業務と,選手の身の回りや家族のお世話というマネージャーあるいは付き人としての業務を,一手に引き受けているわけです。

 

しかし,本来的には,「身の回りのあらゆる世話をする」という業務(これを,「マネジメント業務」と言ったりします)と,選手がチームや企業と契約をする際に,相手と交渉をしたり,法的な知識を駆使したりする業務(これを,「代理人業務」あるいは「エージェント業務」と言ったりします)は,必要とされる能力が違いますので,分けて考えることができます。

 

身の回りの世話をする,マネジメント業務のためには,とにかく,選手のためには他の仕事や私生活がある程度犠牲になっても良い,というサービス精神や,時間をかけること,そして小回りが利くことが要求されます。たとえば,選手や家族が新しいチームで快適に過ごせるように,良い住まいを見つけることなどを思い浮かべてもらえれば分かりやすいかもしれません。こういう仕事を,喜んで,要領よく,スピーディにやる必要があるのです。逆に,法的な知識は,あるに越したことはありませんが,「高度な」法的知識は不要でしょう。

 

他方で,契約交渉の代理業務,エージェント業務は,高度な法的知識や相手方であるチームや企業の事情も理解したうえでの交渉技術が必要不可欠です。契約文言の一つ一つがどのような意味かを的確に理解する必要がありますし,交渉相手がどこまでは折れることができてどこからは譲ることがないかを読み取り,逆に,選手の希望を最大限かなえるにはどのような選択肢を取るのが最良かを法的に可能な選択肢から選びとっていく必要があります。そして,相手との正確かつ細かな交渉が必要になるので,相手の言語を完璧に使えることが重要になります。したがって,日本の野球選手がメジャーリーグに行く際に,その選手のマネージメントは日本の会社がやっているけれど,メジャーリーグチームとの交渉は,アメリカのエージェントに依頼する,ということが起こるわけです。

 

しかし,究極のマネジメントは,やはり契約交渉の代理業務まできちんと対応しますよというマネジメントでしょうし,究極の代理人業務は,選手と家族の幸せをマネジメントするという観点からなし得るものでしょうから,マネジメント業務も代理人業務もできる完璧な人がいれば,それがベストなのかもしれません。でも,現実的にはそのような人はなかなかいないので(それができるのが,有名サッカー選手のエージェントであるジョルジュ・メンデスさんやミーノ・ライオラさんかもしれません),現実的には,マネジメント業務の専門家と,エージェント業務の専門家が協力して選手を支えるのがベストではないかと思います。

 

なお,当事務所は,エージェント業務は可能ですが,マネジメント業務については,信頼できるマネジメント会社を紹介させていただく形を取るようにしております。

 

PROFILE

牧野 誠司

弁護士牧野 誠司

どのような事件に対応させていただくときでも、「牧野弁護士に依頼して良かった」と言っていただけるよう、そのご依頼者のために最良の解決を目指して努力させていただくことを日々の指針としています。

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