相続放棄すると代襲相続は発生しない!専門弁護士がケース別に注意点を解説

相続放棄すると代襲相続は発生しない

代襲相続とは、相続人となるはずだった者がすでに死亡している場合や、相続権を失った場合に、相続人となるはずだった者の直系卑属が代わりに相続することです。

今回の記事では、以下について弁護士がわかりやすく解説します。

・代襲相続とは?
・代襲相続が発生するケース
・【画像付き】代襲相続の事例
・相続放棄し代襲相続が発生しなかった場合、相続権は次順位の法定相続人に

1、代襲相続とは?

代襲相続とは、相続人となるはずだった者が、①相続開始以前に死亡している場合や、②後述するように相続権を失った場合に、その相続人となるはずだった者の直系卑属(子や孫など自分より後の世代の直系の親族)がその相続分を代わりに相続することです。民法第887条第2項第3項、第889条第2項、第901条において定められています。

(1)相続放棄をすると代襲相続は発生しない

相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人にならなかったものとみなされますので(民法第939条)、相続権自体が発生しないため、代襲相続も発生しません。

(2)代襲相続人は相続放棄が可能

代襲相続人も、本来相続人となるはずだった者と同じく、民法第915条第1項により相続放棄をすることができます。

2、代襲相続が発生するケース

代襲相続は以下の(1)~(3)の場合に発生します。

(1)相続人の死亡

相続人が、被相続人が死亡する前に既に死亡していたときには、代襲相続が発生します。例えば、父親が亡くなり、その後にその父親の親(祖父母)が亡くなった場合には、その父親の子ども(祖父母からみると孫にあたる)が、代襲相続人となります。

なお、被代襲者が被相続人の子であるときは、上記のように孫が代襲相続人となり、さらに孫にも代襲原因がある時には、ひ孫が代襲相続人となります(再代襲・民法第887条第3項)が、被代襲者が被相続人の兄弟姉妹であるときは、その子(甥姪)までしか代襲相続は発生しません(一代限りで、再代襲はありません)。

(2)推定相続人の廃除

推定相続人の廃除とは、民法第892条から第895条において定められている制度であり、遺留分を有する推定相続人(相続が発生した場合に相続人となるべき者)に一定の事由が存する場合には、被相続人の請求により、推定相続人の地位を喪失させる制度です。

具体的には、推定相続人が、被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたとき、又は著しい非行があったときは、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができると定められており、家庭裁判所において、排除判決が確定したときはその判決を受けた者(被排除者)は、推定相続人の地位を喪失します。

相続人となるはずだった者が上記排除により相続権を失った場合には、代襲相続が発生します。

(3)相続人の欠格事由に該当する場合

民法は第891条第1号から第5号において相続人の欠格事由を定めています。

故意に被相続人又は同順位以上の相続人を死に至らせたり、死に至らせようとしたために刑に処せられた者や、詐欺又は脅迫によって被相続人に遺言の作成・撤回・取消・変更をさせたり、逆にそれらを妨げたりした者、遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者など、被相続人と相続人との信頼関係や、相続制度の基盤を破壊するような重大な非行を行った者については、相続人となることができません。

相続人となるはずだった者が当該欠格事由に該当して相続権を失った場合にも、代襲相続は発生します。

3、【画像付き】代襲相続の事例

(1)「祖父・祖母」が被相続人で「孫(ひ孫)」が代襲相続人

「祖父・祖母」が被相続人で「孫(ひ孫)」が代襲相続人

上記のとおり、祖父母が死亡した時点で、それ以前に被相続人の子(父若しくは母)が死亡していた場合、孫が代襲相続人となり、さらに孫にも代襲原因がある場合には、ひ孫が代襲相続人となります。

①養子縁組が行われていた場合は注意が必要

被相続人よりも先に亡くなった法定相続人が養子であった場合、その養子の子については出生時期によって代襲相続が発生するか否かが異なりますので、注意が必要です。

養子の子が、養子縁組の後に生まれていれば代襲相続が発生しますが、養子縁組の前に生まれていれば代襲相続は発生しません。養子縁組の前に生まれていた子は、被相続人とは親族関係は生じず直系卑属とは認められないためです。

(2)「叔父・叔母」が被相続人で「甥・姪」が代襲相続人

「叔父・叔母」が被相続人で「甥・姪」が代襲相続人
叔父・叔母が死亡した時点で、相続人となるはずであった被相続人の兄弟姉妹が既に死亡していた場合には、その子である甥・姪が代襲相続人となります。

上記のとおり、相続人が兄弟姉妹の場合には、その子である甥姪までしか代襲相続は発生せず、甥姪の子には再代襲は生じません。

4、相続放棄し代襲相続が発生しなかった場合、相続権は次順位の法定相続人に

相続放棄し代襲相続が発生しなかった場合、相続権は次順位の法定相続人に

(1)第一順位の法定相続人「被相続人の子」が相続放棄した場合

第一順位の法定相続人である「被相続人の子」及びその代襲相続人(民法第887条)全員が相続放棄した場合、相続権は次順位の直系尊属に移ります。

(2)第二順位の法定相続人「被相続人の父母」が相続放棄した場合

第二順位の相続人は、「被相続人の直系尊属」(民法889条第1項第1号)と定められており、さらに「親等の異なる異なる者の間では、その近いものを先にする。」と定められています。

直系尊属(被相続人より上の世代の血縁者)で、最も近い親等は被相続人の父母ですので、その父母が相続放棄をした場合には、ご存命である限り、父母の上の親等である祖父母に相続権が移ります(仮に祖父母の上の親等がご存命の場合、さらに相続権が移ります)。

被相続人の直系尊属全員が相続放棄をした場合には、次順位の兄弟姉妹へと相続権が移ります。

(3)第三順位の法定相続人「被相続人の兄弟姉妹」が相続放棄した場合

最終の第三順位の相続人は「被相続人の兄弟姉妹」と定められていますので(民法第889条第1項第3号)、兄弟姉妹及びその代襲相続人全員が相続放棄をすると、相続人は不存在(誰もいないこと)となります。

代襲相続に関するQ&A

(1)父親の相続放棄をすると、祖父の相続人にならない?

祖父が父親より先に死亡していて、父親がその後に死亡した場合には、父親の相続放棄を行えば祖父の相続人にはなりません。

父親が祖父より先に亡くなり、父親の相続放棄をした後に、祖父が亡くなった場合には、祖父の代襲相続人となります。

(2)祖父と父親、片方のみの相続放棄をすることは可能?

祖父が亡くなり、その相続人である父親が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、孫が父親の地位にたって祖父の相続放棄を行うことは可能です(民法第916条)。

しかし、あくまで孫は父親の相続人の立場ですので、祖父の相続は承認して、父については相続放棄するということはできません。

(3)代襲相続人が相続放棄したほうがよいケースは?

被相続人が債務超過である場合や、様々な理由で相続を希望せず他の相続人と関係なく手続きを行いたい場合には、相続放棄をご検討ください。

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2025.02.20紀啓子