レインメーカー
- 牧野誠司
- 寄り道コラム
武田弁護士が中国法務の小窓を開けたかと思ったら、中から出てきた話題が重すぎてもう開かなくなっちゃった感がありますので、督促の意味で、私がまたコラムを追加します。
何を書こうかなと迷ったんですが、やっぱり映画の話題は書きやすいですね。
私は母の影響でかつては毎日のように映画を見てたんで(最近はほとんど見れてませんが・・・)、話題に事欠きません。
あ、母の影響と言えば、弁護士になったのも、私の母親が弁護士映画を私に何回も見せて「弁護士ええわ~」と刷り込んでいたからかもしれません。あんまり認めたくないですが。子供を弁護士にさせたいお父さん、お母さん(最近は減ってきてますかね・・・)、弁護士映画を見せましょう。
話が逸れましたが、今日は「レインメーカー」です。
これまた日本であんまり売れなかった感じの映画ですが、キャストはマットデイモンとクレアディンズ(なつかし~)、ミッキーローク(笑)と豪華ですし、監督はなんとコッポラさんです。ゴッドファーザー・コッポラですね。
この映画は、マットデイモン演じる新人弁護士の活躍と葛藤を描いたものなんですが、これはもう弁護士も楽しめる素晴らしい映画だと思っています。
ちまたにあふれる日本ドラマの「弁護士モノ」は、弁護士が見てると確実に途中で呆れてしまってチャンネルを変えざるを得ないくらいリアリティがなくて馬鹿げたものが多いですが、アメリカの映画やドラマの弁護士モノは、出来がいいのが多いですね(でも、半分くらいは無茶苦茶ですけど)。
やっぱり、アメリカの方が司法が国民に開かれているから、正しい情報が届くんでしょうね。
あ、というか、この映画は原作者が弁護士でした。日本でももっと弁護士が小説とか書けばいいんですが(いるにはいるんですけどね)。
この映画を見たのは弁護士になる前ですので、今見たら、えぇ~って思うところもあるかもしれませんが、弁護士の悩みがリアルに描かれていて良かったですし、「弁護士として真っ直ぐ生きるとはどういうことか」ということを考えさせられる映画です(主人公も、終始真っ直ぐではないんですが)。
弁護士目線から見たこの映画の見所は、①法廷でのやりとり、②アメリカの法制度のすごさ、③ボス弁のすごさ、といったところかなと思います。
①法廷でのやりとりでは、相手方弁護士であるジョンボイド(ベテラン弁護士役)が、主人公の尋問に対し、「異議あり、誘導です」「それも誘導です」「すみません、やっぱり誘導です」と立て続けに何度も異議を出すシーン(誘導尋問は原則として認められないことによります)。日本の法廷では、誘導尋問に甘い(問題視せずに許す)ところがありますが、私はこのときのジョンボイドのシーンをときどき思い出して、私の裁判での尋問でも、結構異議を出します。
「いやぁ、それも誘導ですから」とか言って(笑)。日本では裁判所も誘導尋問に寛容なので、「まぁ、いいでしょう」って言って流されるところがあるんですが、このあたり、このジョンボイドの姿勢を見習って、もっと日本でも誘導尋問かどうかというのはシビアに見ていくべきだと思いますね。
いまだに、「AかBかどちらですか?」なんていう典型的な誘導尋問が誘導じゃないと誤解している弁護士や裁判官もときどきいますからね。
次に面白かったのが、②アメリカの訴訟制度のすごさ、特にディスカバリーっていう制度ですね。
この映画でもこのディスカバリー手続が実践されているんですが、これはすごい。
日本の法制度は、はっきり言って、自分に不利な事実や証拠は隠し放題、うまくやれば全然隠せますっていう制度になっていますが、アメリカではほんとに真実発見が重視されているんですね。
これぞ正義の前提だと思いますね。
アメリカでは、民事事件でも、メールの記録なんかが表に出されるようで、当事者は隠し事なんてほとんどできない。
でも、その分、真実をあぶりだす弁護士の仕事量は半端じゃなくなりますし、そうなると、弁護士費用が非常にかさみ、「金がなければ真実発見もできない」という批判がされたりするのかもしれません。
まぁ、金があっても真実発見ができないよりマシですよね。
最後に、③ボス弁(ボス弁護士)のすごさ、ですが、この映画で、勝負どころでマッドデイモンが壁にぶち当たった時に、マッドデイモンがボスであるミッキーローク(金儲け主義の弁護士役)に電話をしたら、ミッキーロークはバカンスの最中だったのに、これこれこういう過去の判例(裁判例)があるからそれを使えってアドバイスするんです。
その言い方が、これ見よがしな感じじゃなくって、すらすらっと言うんですが、どちらかというと悪徳弁護士として描かれていたボス弁なのに、おぉ、すごいじゃん、さすがベテラン、さすがボスっていう感じで、とてもかっこいいシーンなんです。やっぱり、年齢とともに、経験と知識を重ねた弁護士ってかっこいいですよね。
私の前の事務所の上司たちもそんな弁護士でした。あと、弁護士は判例の知識でも勝負してるんだぞってところが出てたのもリアリティがあって良かったです。
あ、それでも、この映画の最大の魅力は、今思い出しましたが、④新人弁護士が試行錯誤してベテラン弁護士に勝つっていうところですね。
弁護士は、弁護士になって1年目でも、30年目のベテラン弁護士やベテラン検察官を相手にしても勝たなければならない職業ですし、また、センスと知識があって手を抜きさえしなければそれができる職業ですので、こういうことって実際にあるんですよね。
やっぱり若いうちは手を抜かずにしっかり勝って、年をとっても、若手にひっくり返されないように、手を抜かずにしっかり勝たないといかんですね。
簡単ではないんですけど・・・(先日も、他の事務所ですが、弁護士になったばかりの赤堀順一郎弁護士が、無罪を立証して検察に謝罪までさせましたね。拍手!!!弁護士の鑑ですね・・・)。
しかし、書き出すと、長くなっちゃいますねぇ、コラム・・・。
次回はもっと短くします・・・。
武田先生、早く小窓開けてください。
ダイジェスト版でいいので。
中国法務のお仕事で大変忙しいのは理解しておりますが(笑)。