所属弁護士コラム

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弁護士が見る映画

  • 牧野誠司
  • 寄り道コラム

気づけば2018年です・・・。皆様本年も何卒よろしくお願いいたします。
昨年は、結局このコラムは確か一本もアップできなかったように思います・・・。

さて、私は映画ネタで結構このコラムを書いているのですが、お気づきかもしれませんが、結構古い映画ばっかり取り上げて書いてます。というのは、最近、私が見ている映画というのは、「アナと雪の女王」とかのピクサー系か、アイアンマンとかのアクション系の二つにひとつという状況でして、とても、法律コラムに引っ張ってこれるような題材じゃないんですよね・・・(;^^)。結構重い映画とかは、ずいぶん昔に観たものばかりになっちゃって・・・。

なんでそういう重い映画を最近は観ないのかというと、はい、ご想像の通り、「毎日の現実が重い映画みたいだから」です。
たとえば、私たちが担当する仕事では、殺人事件とかもあれば、会社の倒産に立ち会う(というか、そういった事件におけるプレーヤーになる)ようなことも多々ありますので、正直、「人間ドラマ」については、毎日お腹いっぱいの状態でして、たまにお風呂の中でスマートフォンで映画を見たり、移動中の飛行機で映画を見るというときくらい、そういった人間ドラマから離れた映画で別世界に飛んでいきたいわけです。

たとえば、「それでも僕はやっていない」という冤罪を題材にした映画がありますが、我々弁護士は、刑事事件であれ、民事事件であれ、それなりにちゃんと裁判をこなしている弁護士であれば、「裁判官が分かってくれない」と嘆きたくなる経験、もっと言えば、「この裁判官、というか、そもそも裁判所ってク〇だな(おっと失礼)」と思うような経験を何度かしているものでして(そういう経験をしてない弁護士はまだまだ青二才の私から見てもまだまだひよっこですね。
本当に裁判に強い弁護士になるのは、そういう経験をしてからです)、そういったマグマのような怒りを酒で流してなんとか夜に寝て翌日の仕事に備えるという日々を送っていますので、家に帰ってまで、冤罪の映画を見てそのマグマをまた再燃焼させることなんて、絶対避けたいわけですね。

あと、日本の弁護士ドラマでありがちな、「絶対に勝つ」弁護士という漫画のような設定のドラマや映画も、とても観たいとは思わないですね。
日常的に、ベストを尽くして、考え得る方策を全て取っても勝てるかどうか分からない(しかし、勝たなければならない)事件を抱えているのに、非常に稚拙な方法や、法制度を全く無視した設定で事件を解決したことにしてしまうようなドラマや映画を見ると、イラっとしてしまうわけですね。
分かりやすく言うと、サッカーを毎日必死で頑張っているプロサッカー選手が、少林サッカーを観てもきっと楽しくないでしょう。そんな感じです

(あと、念のために付言しておきますと、ドラマや映画の弁護士ものや検察官ものは、なんせ相手方がイマイチ賢くない設定ですが、現実の世界では、相手方の弁護士も、司法試験を合格した賢い人たちなわけですし、大きな事件になればなるほど、相手方の弁護士も、老若男女問わず、賢いだけじゃなくて非常に狡猾で(というと失礼ですが)智慧のある、やり手のデキる法曹なわけですよね。
私の事件の相手方にも、日本最大規模の法律事務所の弁護士が就任しておられる事件も複数あります。
そういったやり手の相手方弁護士や検察官たちを相手にして、ああでもないこうでもない、こうすれば勝てるかな、こうすれば和解できるかな、あっちの持ち球はなんだろうなと頭を悩ませている身からすれば、自分よりアホそうな俳優が『こうすりゃ勝てるじゃん』って感じで勝っちゃうドラマや映画を見ると、イラっと来ますよね)。

というわけで、現状は、ピクサーとアクション映画の二択という状況なわけで、たぶん、結構な割合の弁護士が、こういう私の感覚には共感してくれるんじゃないでしょうかね。
みんな、休みの時間まで、法律のことを考えたくないですよねぇ。

でも、アメリカの法律系・弁護士系のドラマとか映画は、日本の弁護士が見ても、かなり楽しいものが多いですね。
有名なところで言えばSUITSなんかがありますが、単純に、アメリカの法律系・弁護士系のドラマは、ちゃんと民事訴訟や刑事訴訟をかなり勉強して作られていますし、そもそも、国民に司法が開かれているから、国民が司法の知識を結構ちゃんと持っているんでしょうね。
しかも、アメリカの法律系・弁護士系のドラマは、相手方もまぁまぁ賢くて強いことが多いですし、騙し騙されのやりあいで、実際の我々の仕事に近いところがあって、「そうそう」「分かるわ~」と共感させてもらえる部分が多くて、しかも、それを美男美女がやってくれているから、「なかなかかっこいいじゃん、この仕事も」なんて思えるので、観てて気持ちいいんでしょうね。
SUITSなんて、「弁護士資格を持ってない人が弁護士業をやっている」というあり得ない設定で、その大前提たる設定に無理があるから終始その点についてはわずかながらイライラしてしまう(さっさと辞めて正面から司法試験受ければいいのにどんどん深みにはまって後戻りできなくなっていく)わけですが、それでも、我々専門家が見ても面白いですから、製作者側の力量というのはすごいですよね。

でも、SUITSも、ネタが尽きてきたら、やっぱり無理な展開に頼るようになってくるので、私たち同業者から見たら、「はいはい、もう結構です」となってしまうので、結局また、ピクサーとアクション映画を繰り返し見てしまうわけです。

しかし、ピクサーは毎年1本以上のペースで素晴らしい作品を作っていて本当にすごいですね。
Singとかも、ネズミがマイウェイを歌いだしたのには辟易としましたが(マイウェイって、そんなに良い歌ですかね?(笑)
シナトラが歌うならすごいパワーがある歌だと思いますけど。ちょっと理屈っぽいですよね)、やっぱりエンターテイメントとしては素晴らしい映画でしたね。
特にスカーレットヨハンソンの歌唱力にビビりました。修正はかけてるんでしょうけど。

弁護士 牧野誠司