亡くなった方の最後の住所調査

「両親が離婚して母に引き取られて30年近く経ち、その間父とは一度も会っていませんでしたが、突然鉄道会社から父が鉄道事故で亡くなったから損害賠償をしてくださいとの手紙が来たので相続放棄をしたいです。けれども父の亡くなったときの本籍や住所は全くわかりませんが相続放棄はできますか?」とのご相談がありました。

 

相続放棄をするには、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をしなくてはなりませんが(民法938条)、申述する家庭裁判所は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所でなくてはなりません(家事事件手続法201条1項)。

そのため、相続放棄をするためには亡くなられた方の最後の住所地を調べなくてはなりません。

 

現在のご相談者様の本籍や住所地が分かれば、そこから戸籍をたどって、亡くなられた方の最後の住所地は知ることはできます。

 

しかし、離婚から何年も経っている場合、亡くなられた方が本籍や住所地を何度も変えていることがあったり、ご相談者様自身もお引越しやご結婚などで、本籍や住所地が何度も変わっていることがあります。

今回のご相談者様もご両親の離婚後、県をまたぐ引っ越しを何度かされていて、ご結婚もされていたのでのまさにこのような状況でした。

ご自分で戸籍や住民票をたどるのはとても時間と労力がかかりますし、また3ヶ月という申述期間もあり、調査をしている最中に期限が過ぎてしまう恐れもあります。

 

今回のご相談者様のご相談者様の現在の戸籍から、ご両親が婚姻されていたときの戸籍にたどり着くまでに3度異なる役所から戸籍を取り寄せ、その後、亡くなられたお父様の最後の住所地にたどり着くまでにも2度異なる役所から取寄せをしました。

 

最終的には、お父様の最後の住所地もわかったので、その住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述をして、無事受理されました。仮にご相談者様ご自身でされた場合には、もしかすると3ヶ月以上かかっていたかもしれません。

 

無事に相続放棄の申述が受理されたのをご報告したときには、ご相談者様もホッとされたようでした。

 

ご自身では大変な作業も専門家にお任せいただければと思います。まずはなんでもご相談ください。

                                                                                                                                                                                               弁護士 森下 裕

2021.03.31森下裕