相続放棄と遺留分放棄の違いとは?手続き方法を弁護士が詳しく説明
今回の記事では、相続放棄と遺留分放棄の違いについて簡単にわかりやすく解説します。
相続放棄・遺留分放棄のメリットやデメリット、手続きの方法、注意点などを知っておくと良いでしょう。
相続放棄ができないケースについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
「相続放棄ができないケースとは?対処法・注意点を弁護士が詳しく解説」
1、相続放棄と遺留分に関する基礎知識
(1)相続放棄とは?
相続放棄とは、相続による権利義務の承継の一切を拒否するものです。
「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3カ月以内に裁判所へ相続を放棄する旨の申述を行い、申述が受理されることで、相続の放棄が可能となります(民法915条、938条)。
相続を放棄した者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
(2)遺留分とは?
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に対し、相続に際して法律上取得することが補償されている遺産の一定割合のことをいいます(民法1042条1項)。
(3)遺留分放棄とは?
遺留分放棄とは、遺留分権利者が遺留分の権利を手放すことです。
遺留分の権利を手放した場合、贈与又は遺贈を受けた者に対し、遺留分を侵害されたとして、相続財産に属する不動産や金銭などの返還を請求すること(民法1046条 遺留分侵害額請求)ができなくなります。
(4)遺留分放棄と相続放棄の違い
相続放棄は、相続人としての地位を放棄し、その効果として「初めから相続人ではなかった」とみなされるため、遺産の相続権を有しません。
一方、遺留分放棄はあくまでも遺留分権利のみを放棄しているため、遺留分放棄後も、相続人であり、相続権に基づき遺産を相続することが可能です。
2、遺留分放棄の注意点
(1)遺留分放棄の撤回は原則不可
遺留分放棄は原則、撤回することは出来ません。
ただし、相続開始前(被相続人の生前中)に裁判所の許可を得て遺留分を放棄した場合に、裁判所に対し、遺留分放棄の許可の取り消しを求め、裁判所がこれを認めた場合には、遺留分放棄を取り消すことが可能です。
裁判例では、「許可審判当時の事情が変化し、遺留分放棄の状態を存続させておくことが客観的に見て不合理、不相当と認められるに至った場合に」許可審判を取り消すことができる、としています(東京高等裁判所昭和58年9月5日決定)。
3、遺留分放棄のメリットとデメリット
(1)遺留分放棄のメリット
特定の相続人に全て又はほとんどの遺産を相続させることを希望し遺言を作成した場合に、他の相続人が遺留分放棄を行うことで、遺言通りの相続が可能になる、というメリットがあります。
(2)遺留分放棄のデメリット
遺留分とは、遺産の相続における、相続人に対する最低限の保障であるため、遺留分放棄によってこの最低限の保障を失うこととなります。
また、遺留分は放棄したとしても、相続人としての地位は失っていないため、被相続人に負債が見つかった場合に、これを法定相続分に従い相続する義務を有しています。
4、遺留分放棄の手続き方法
(1)生前の遺留分放棄手続き
相続の開始前(被相続人の生存中)に遺留分を放棄する場合には、家庭裁判所の許可を得て放棄をする必要があります(民法1049条1項)。
(2)死後の遺留分放棄手続き
相続開始後の遺留分放棄の手続において、裁判所の許可は不要です。
遺留分侵害額請求権を行使できる相手方に対し、遺留分を放棄する旨意思表示することで、遺留分放棄をすることが可能です。実務上、念書など書面において意思表示をすることが多いです。
5、消極財産(借金など)の調査方法
(1)相続財産に関する調査方法とアドバイス
被相続人の相続財産において、消極財産(借金など)が積極財産より多い場合、相続放棄を行いたいと考える方がほとんどでしょう。
消極財産の調査方法は以下の通りです。
①遺品等の調査
まずは、被相続人の遺品や被相続人宛の郵送物の中に、借用書・請求書・借入残高が記載されたハガキなど、借金の存在を疑わせるような資料がないかを探します。また、通帳・銀行の取引履歴等を確認すると、借り入れや弁済を疑わせるような出入金履歴が見つかる場合もあります。
被相続人の相続財産に不動産がある場合には、法務局で登記事項証明書を取得して、不動産が担保にされていないかを確認することも有用です。
②信用情報登録機関への問い合わせ
信用情報登録機関に、借金の登録がないか問い合わせ照会を行うことも可能です。なお、被相続人が信用情報登録機関に加盟していない金融業者から借金をしていた場合、信用情報登録機関の照会結果において、その存在が明らかとならないため、注意が必要です。
6、法律の専門家に相談するメリット
(1)相続放棄の手続きの代行
遺留分放棄と相続放棄は全く異なる制度です。相続人として遺産を承継することを希望しない場合、「遺留分放棄」ではなく「相続放棄」の手続きが必要となります。
「相続放棄」を弁護士に依頼する場合、必要戸籍一式の取り寄せから、各案件に応じた申述書の作成、裁判所とのやり取り、最終的な受理まで、全て代理人である弁護士に任せることができます。
相続放棄をご希望される方は、専門家にご相談頂き、手続き代行の依頼をご検討ください。
7、相続放棄の相談は賢誠総合法律事務所へ
当事務所は、全国から多数の相続放棄の依頼を受けており、確かな実績を有しております。
熟慮期間を経過していたり、他の事務所で難しいと言われたりした場合でも、是非一度ご相談頂ければと存じます。
必要戸籍一式の取り寄せから、各案件に応じた申述書の作成、裁判所とのやり取り、最終的な受理まで、全て代理人である弁護士にお任せいただけます。また、被相続人の債権者への相続放棄の通知対応も致しますので、ご依頼者様の精神的なご負担も大幅に軽減されることと思います。
費用につきましては、全ての実費込みで、お一人当たり一律5万5000円(税込み)です。追加費用は頂きませんので、安心してご依頼頂けるかと存じます。相続放棄は是非、賢誠総合法律事務所にご相談ください。
8、まとめ
今回は、相続放棄と遺留分放棄の違いについて解説しました。相続放棄の手続きについて悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
2024.07.03中川真緒