医療法人の事業譲渡における個人情報保護法上の情報の取扱い

立野 里佳

  • 個人情報保護

1 はじめに

当事務所では、医療法人に関するM&Aの案件のご相談についても数多くの対応実績がございます。今回のコラムでは、事業譲渡に伴う個人データの第三者提供について、医療法人の事業譲渡を例に解説します。

2 個人データの第三者提供

個人情報保護法では、個人情報取扱事業者は、第三者に対して個人データを提供する場合には、原則として、あらかじめ本人の同意を得ることが必要とされています。

一方で、個人情報保護法上、本人の同意を得ずに個人データの第三者提供が認められているケースがございます。

3 個人情報保護法第27条第5項第2号

本人の同意なく個人データの第三者提供が認められているケースの一つが「合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合」です。このケースでは、個人情報保護法第27条第5項第2号により、個人データの提供を受ける者は「第三者」に該当しないとされ、その結果、個人データの提供にあたって、本人の同意の取得が不要となります。

4 診療録等の個人情報の提供について

医療法人のM&Aのご相談に対応した際、ご相談いただいた医師の先生が、提供する個人データには「診療録等」が含まれているところ、個別に患者の同意が必要ではないかと懸念されていることがありました。

上記の解説のとおり、「第三者」への提供ではない以上、個人情報保護法上、本人(患者)の同意は不要です。

この点については、厚労省が「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000027272.html)のQ&Aにおいて、以下のとおり回答していることが参考になります。

Q4-27 医療機関の廃止等の理由により、別の医療機関が業務を承継することになりましたが、診療録等の個人データを提供する際に、患者の同意が必要なのでしょうか。

A4-27  本件のような場合は、「合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合」(個人情報保護法第27条第5項第2号)であり、承継先の医療機関は第三者に該当しないので、患者の同意がなくても提供可能です。

5 最後に

当事務所では、クライアントの皆様の小さな疑問やご懸念点も解消していただけるよう、きめ細やかなご相談対応を心掛けております。お気軽にご相談ください。