契約書における一般的な解除条項について

土井 將

  • 企業法務

事業主や法人においては、日々の取引毎に様々な契約書を締結されております。そして、いずれの類型の契約書においても、大抵の場合は、後半の一般条項部分に契約解除に関する条文が設けられます。当該契約解除に関する条文の規定のされ方としては、一方当事者に特定の事由が生じた場合には、他方当事者による無催告解除が認められるというものがオーソドックスであり、そのような解除条項の中でも、「差押え、仮差押え、仮処分又は競売の申立てがあったとき、もしくは公租公課を滞納し督促を受けたとき、又は保全差押えを受けたとき」といったような、強制執行や民事保全が無催告解除事由の1つとしてされることが通常です。

こちらの解除事由については、通常よくみられるものですので、当事者間の契約書の内容確認において問題視されることは多くありません。もっとも、契約書によっては、こちらの解除事由のうち、仮差押えや仮処分といった民事保全については、本当に無催告解除事由としてよいかを吟味する必要があります。

すなわち、仮差押えや仮処分といった民事保全は、通常の訴訟等に先立ち、又は訴訟等と並行して仮の手続きとして発令されるものですが、裁判所が本案前に暫定的に仮の判断をするという手続きの性質上、真実としては非のない当事者に対しても発令され得るものです。また、確定的に支払いをしなければならない債務の弁済を怠った場合になされる強制執行とは異なり、そもそも債務の存在を争っているような場合にも発令されるものです。

そうであるにもかかわらず、漫然と民事保全がなされることを解除事由としてしまった場合、思わぬ場合に契約が無催告解除されるリスクを抱えることになります。

そのため、締結する契約が事業場上重要なものである場合や、取引の規模として大きい場合、一定以上の期間の継続が必要な場合、民事保全の発令を無催告解除事由から除外することを検討すべきであるという点に留意する必要があります。