事例紹介:顧問先企業の元従業員による不正行為に対し、速やかな調査を実施し、返金等の合意書を作成することに成功した事例

伊藤 亮二

  • 不正調査
  • 企業法務

1 顧問先企業からのご相談

 サービス業等を営む顧問先企業から「元従業員による現金売上の着服の疑いがあるので、元従業員に着服した売上を返還させたい。」とのご相談を受けました。

2 当事務所の対応

(1)不正調査及び対象者の呼び出し

 当事務所において、顧問先企業からご提供いただいた資料を分析し、顧問先企業から分析結果についてヒアリングを実施したところ、元従業員からは、諸々の弁解がなされることが予想される状況であることが分かりました。

 そこで、当事務所からは、顧問先企業に対し、追加の客観的資料の提供を依頼し、そのような弁解がなされた場合に備えました。また、着服の全容を解明するためには当該元従業員からの聴き取りが不可欠でしたが、当該元従業員は、すでに会社を辞めている以上呼び出しに応じる義務はなく、当該元従業員に対してこちらが把握している情報を詳細に伝えてしまうと、呼び出しに応じない可能性が高まることから、当事務所への出頭を求めるシンプルな内容証明郵便を当事務所から当該元従業員に送付し、当該元従業員の反応を見ることとしました。

 その結果、すぐに当該元従業員から当事務所に連絡があり、出頭には応じるという回答を得ましたが、着服については否認している状況でした。

(2)対象者からの事情聴取及び合意書の作成

 当事務所としては、客観的資料に基づいて言い逃れができなくなるように聴取事項や聴取順等を工夫した聴取の事前準備を行うとともに、聴取当日には、聴取の冒頭で、「今回は不正調査を専門に行っている弁護士が調査をしている。」ということを明確に伝えるなどしたところ、当該元従業員は、自らが着服を行っていたことを全て認め、着服金の返金等に応じる旨の合意書に署名押印をするに至りました。

3 顧問弁護士による企業内部の不正に対する対応及び予防策

 もし、不正調査に強い顧問弁護士がいれば、このような元従業員による不正が発覚した際も、迅速な対応と被害回復が可能となる場合があります。また、どのような業務フローを採用すれば従業員による不正が起きにくくなるか、また、不正が起きた場合にそれが発覚しやすくなるかについてアドバイスを顧問弁護士からすることも可能です。

 企業が大きく成長するにつれ、どんな優良企業であったとしても、企業内部の不正とは無関係でいられなくなることが多いですし、他方、企業の規模がそれほど大きくない場合でも、経理や売上金の管理を特定の従業員に任せている場合には不正が起きやすく、また、不正が発覚しにくい状況になっていることが多いと言えます。

 役員や従業員による不正が起きる前に、一度、顧問弁護士のご検討をされることをお勧めいたします。

(弁護士|公認不正検査士 伊藤亮二)