「口コミ投稿でギフト券」は大丈夫?
「会社のサービス(料金3000円)について口コミを投稿してくれた方に、謝礼として500円のギフトカードをプレゼントしたい。何か法的に問題はありますか?」というご相談を受けたことがございます。
口コミサイト等における好意的なレビューは新規のお客様を呼び込む大きなきっかけとなります。「お客様の声」は、ビジネスにとって非常に重要ですので、企業の皆様にとってはマーケティングにおける重要な課題かと存じます。
景品表示法上の問題点
令和5年10月1日から、景品表示法5条3号に基づく告示によって、いわゆる「ステルスマーケティング」が景品表示法の規制対象となりました。
「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」、すなわち「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」が規制されることになったのです。
消費者庁の景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック[PDF:2.7MB]によると、ステルスマーケティングの例として以下のようなケースを挙げています。
- 商品の販売担当者(役員、管理職等)が販売を促進するためや、自社商品の認知度をあげるために商品の画像や文章をSNSに表示(投稿)する場合
- 事業者がインフルエンサーに商品の特徴などを伝えた上で、インフルエンサーがそれに沿った内容をSNS上や口コミサイト上に表示(投稿)する場合
- 事業者が、インフルエンサー等の第三者に対し、経済上の利益があると言外から感じさせたり、言動から推認させたりして、第三者がその事業者の商品について表示(投稿)を行った場合
他方で、消費者庁は、
「ECサイトに出店する事業者が自らの商品の購入者に対して当該ECサイトのレビュー機能による投稿に対する謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合であっても、当該事業者(当該事業者から委託を受けた仲介事業者を含む。)と当該購入者との間で、当該購入者の投稿(表示)内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われておらず、客観的な状況に基づき、当該購入者が自主的な意思により投稿(表示)内容を決定したと認められる投稿(表示)を行う場合」
については、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」に該当しないと紹介しています。
今回のご相談内容についても、口コミに対して謝礼がされる場合であっても、お客様の口コミ内容について高評価とするよう依頼するなどのやり取りがなく、客観的な状況に基づき、お客様の自主的な意思による口コミの投稿だと認められるときには、その口コミ投稿は「ステルスマーケティング」に該当しないと考えられます。
もっとも、景品表示法において次に問題となるのが、謝礼の金額です。
景品表示法では、過大な景品の提供を防ぐため、景品の最高額に上限を設けています。
口コミ投稿をしたサービス利用者全員にもれなく提供する景品は「総付景品(そうづけけいひん)」と呼ばれます。
総付景品の上限額は、提供するサービスの取引価額によって決まります。
①取引価額が1,000円未満の場合 → 景品の上限は200円
②取引価額が1,000円以上の場合 → 景品の上限は取引価額の10分の2
今回のご相談内容について検討すると、サービスの取引価額(料金)は3000円ですので、その上限600円におさまる500円のギフトカードは提供しても問題ないと考えられます。
このように、謝礼の金額が適切かどうかは、会社のサービスないし商品の価格に左右されるのです。
Googleマップへの口コミ投稿の注意点
Googleは、Googleマップに投稿するコンテンツのなかで、以下のものを「虚偽のエンゲージメント」として禁止しています。
企業が提供するインセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)が誘因となって投稿されているコンテンツ
今回のご相談についても、景品表示法においては問題とならないものの、Googleマップへの口コミ投稿は避けてもらうようアドバイスさせていただきました。
まとめ
会社のマーケティング施策が法的に問題とならないか少しでも不安を感じたら、ぜひ一度、専門家である弁護士にご相談ください。