病院の顧問弁護士とは?費用相場と導入メリットを徹底解説

斉藤 聡子

  • 企業法務

「病院のクレーム対応に追われている」「モンスター患者への対応が限界」「スタッフの離職が止まらない」
こうしたお悩みを抱える病院・クリニックの経営者や事務長の方は少なくありません。

医療機関では、医療過誤・労務トラブル・未払医療費・誹謗中傷など、さまざまなリスクが日常的に存在しています。これらの問題に適切に対応できなければ、経営悪化や風評被害、スタッフの士気低下につながりかねません。

そこで近年、注目されているのが病院の顧問弁護士の存在です。
本記事では、以下の内容をわかりやすく解説します。

  • なぜ病院に顧問弁護士が必要なのか
  • 顧問弁護士が対応できる具体的な業務とその効果
  • 費用相場と費用対効果
  • 弁護士選びで失敗しないポイント

病院経営の安心と信頼を守るための第一歩として、顧問弁護士の導入を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。

病院が顧問弁護士を必要とする理由とは?何ができる?

病院やクリニックといった医療機関は、患者対応や労務管理など多くのリスクに常にさらされています。万が一トラブルが発生した際、適切な法的対応ができなければ、経営に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。

ここでは、なぜ医療機関が顧問弁護士を必要とするのかを具体的に解説します。

(1)トラブルを法的視点で解決できる

医療の現場では、日々さまざまな問題が発生しますが、その一つひとつに法的根拠を持った対応が求められます。

① 医療過誤・クレームの対応

診療ミスやインフォームドコンセント不足などによる医療過誤が訴訟へと発展するケースは少なくありません。こうした場面では、弁護士の助言を受けながら対応することで、病院側の不利な状況を回避できます。顧問弁護士がいれば、早期に事実関係を整理し、文書作成や交渉のサポートが可能です。

② モンスター患者の対応

近年増加しているのが、過剰な要求や暴言・威圧的態度をとる「モンスター患者」への対応です。医師や看護師が個別対応していると、精神的・時間的コストがかさみます。弁護士が対応窓口として介入すれば、現場のスタッフを守りつつ、トラブルを最小限に抑えることができます。

③ 誤解による風評・ネット誹謗中傷の対応

SNSや口コミサイトに書かれたネガティブな投稿が、患者離れを引き起こすこともあります。顧問弁護士であれば、投稿の削除依頼や発信者の特定、名誉毀損への対応などを迅速に行うことができ、病院のブランドと信頼を守れます。

(2)トラブルを未然に防ぐことができる

トラブルが発生してからの対応では遅く、日頃からリスクを想定して備える「予防法務」の考え方が、医療機関には不可欠です。

① 契約書チェック・ガイドライン策定

医療従事者の雇用契約や業務委託契約、患者との同意書など、医療現場ではさまざまな文書が交わされます。弁護士が事前に内容を確認することで、将来のトラブルを未然に防ぐことが可能です。また、職員用ガイドラインやマニュアルの整備にも法的視点が役立ちます。

② 日常的な労務・内部通報制度の整備

医療機関では、長時間労働や人間関係による労務トラブルが発生しやすい傾向があります。労働時間管理や就業規則の整備、内部通報制度の導入などに弁護士が関与すれば、法令違反のリスクを下げることができます。特にパワハラ・セクハラ防止対策は今後の重要課題です。

③ トラブルが表面化する前の対策

トラブルが表面化する前に、顧問弁護士が関与することで、初期対応の質が格段に上がります。問題が深刻化する前に解決の糸口を見出し、訴訟や行政指導に発展することを防ぐことができます。これは「防火」ではなく「防煙」とも言える、現代経営における必須の視点です。

(3)費用対効果をどう考えるべきか

「顧問弁護士の費用は高いのでは?」という不安の声は少なくありません。しかし、目の前のコストではなく、トラブルによる損失を防ぐための投資という視点が重要です。

① 顧問料とトラブル1件の損失を比べてみる

たとえば、医療ミスやスタッフとのトラブルが訴訟に発展した場合、損害賠償や裁判費用で数十万〜数百万円かかることもあります。それに比べて、顧問弁護士の費用は月額数万円程度。大きな損失を防げるなら、むしろ安く済んでいるとも言えます。

② 法務保険や院内対応では限界がある

「保険に入ってるから大丈夫」「院長が直接対応すればいい」という声もありますが、実際はそう簡単ではありません。保険は使える場面が限られていたり、支払いまで時間がかかったりします。また、院長やスタッフが直接対応すると、専門知識が足りなかったり、感情的になってしまったりして、問題を悪化させるケースもあります。

弁護士であれば、中立的な立場で冷静かつ的確に対応できるのが強みです。

③ 法務の安心感が、経営にも職場環境にもプラス

顧問弁護士がいれば、法的なことは専門家に任せて、院長や職員は本来の業務に専念できます。また、万が一トラブルが起きても「すぐに相談できる人がいる」という安心感が、スタッフの働きやすさや定着率向上にもつながります。

「法務の備え」は、病院の信頼や経営の安定を支える見えない力とも言えるのです。

顧問弁護士選びで失敗しないポイント

顧問弁護士を選ぶ際、「費用が安いから」「有名だから」といった理由だけで契約してしまうと、いざというときに頼れなかった…というケースも少なくありません。

病院法務の現場には、医療特有の事情や専門知識が必要です。ここでは、信頼できる弁護士を選ぶために押さえるべきチェックポイントを解説します。

(1)病院の実情に詳しい弁護士を選ぶ

医療機関は、一般企業とは異なる法制度・組織構造の中で運営されています。そのため、「企業法務の経験がある」だけでは不十分。医療業界ならではのルールやリスクに精通しているかどうかが重要です。

① 医療法人制度や診療報酬制度に理解があるか

医療法人には、会社法に基づく法人とは違った独自の運営ルールがあります。

  • 理事会の構成に関する制限
  • 出資持分の取扱いや承継
  • 非営利性の原則

また、診療報酬制度についても最低限の理解がないと、報酬請求や債権回収、委託契約上の支障に対応できません。医療制度の動向にもアンテナを張っている弁護士であれば、経営戦略まで踏み込んだアドバイスが可能です。

② 看護部・事務方との連携力があるか

トラブルの多くは、現場のスタッフとの連携の中で発見・解決されます。医師や事務長だけでなく、看護師・事務員などとのコミュニケーションが取れる弁護士かどうかは、意外と重要なポイントです。

  • クレーム患者対応時に看護部や事務方と協力して謝罪・交渉
  • 労務トラブルで、現場聞き取り調査を実施
  • 業務フロー改善の提案(同意書の見直し・ヒヤリハット報告制度の導入など)

弁護士自身が現場の言葉・温度感を理解しているかどうかが、対応の質を左右します。

③ 地元の保健所・労基署対応経験があるか

行政からの指導や調査が入った場合、弁護士が地元の保健所や労働基準監督署の対応経験があるかは安心材料になります。

  • 是正勧告への回答書作成
  • 看護配置基準や労働時間管理に関する対応

地域の行政機関の“運用のクセ”まで理解していれば、交渉や説明もスムーズに進みます。

(2)顧問契約前に確認すべき具体的ポイント

形式的に顧問契約を結んだだけでは、「実際にどこまで対応してくれるのか」が曖昧になり、トラブルの原因になります。契約を結ぶ前に、以下の点をしっかり確認しましょう。

① 契約書に明記される業務範囲と対応時間

「どこまでが顧問料の範囲で、どこからが別料金なのか」については、必ず事前に契約書で明文化してもらいましょう。

  • 契約書チェック:月何通まで含まれるか
  • 出張対応:訪問は月何回まで/交通費の有無
  • 裁判対応:別契約になるか(割引あり?)
  • 対応時間:平日◯時〜◯時/休日対応の可否

後から「それは顧問契約に含まれていません」と言われないために、サービスの境界線を明確にすることが大切です。

② 緊急時の連絡手段・レスポンス

クレーム対応・行政調査・労務問題などは、夜間・休日に突然起きることもあります。以下の確認は必ずしましょう。

  • 緊急時、どの連絡手段が使えるか(携帯直通?LINE?)
  • 相談から何時間以内に返信・初動対応してくれるのか
  • 複数弁護士でバックアップ体制はあるか

動いてくれる弁護士であるかどうかは、対応の早さで判断できます。

③ 解約条件の有無

契約前には「合いそう」と思っても、実際に契約してみたら合わなかったということもあります。そのため、以下の点を契約前に必ず確認しましょう。

  • 解約時の手続き方法(書面通知?即日解約?)
  • 契約解除の予告期間(30日前通知など)
  • 最低契約期間の有無(◯ヶ月縛り)

賢誠総合法律事務所の強み

賢誠総合法律事務所は、医療機関に寄り添う法務パートナーとして、多くの病院・クリニックから選ばれています。法的対応だけでなく、「安心して相談できる存在」として、病院経営の土台を支えるサービスを提供しているのが最大の特徴です。

(1)医療・労務・風評までワンストップ対応

医療過誤やモンスター患者対応、スタッフの労務問題、ネット上の誹謗中傷まで、1つの窓口で対応可能です。それぞれを別の弁護士に依頼する必要がなく、業務負担とコストを同時に軽減できます。

(2)豊富な医療法人顧問実績

これまでに多数の医療法人・診療所の顧問業務を担当し、さまざまなトラブルの予防・解決に携わってきた経験があります。そのため、理事長や事務長の視点に立ったアドバイスができる点が強みです。

(3)初回相談無料・オンライン相談対応も可能

「弁護士に相談するのは敷居が高い」と感じる方でも安心の初回無料相談制度があります。 さらに、オンラインでの相談にも対応しているため、遠方の医療機関や多忙な方でも利用しやすい環境です。

まとめ

医療機関が直面する法的リスクは、年々複雑化・多様化しています。医療過誤、クレーム対応、労務トラブル、ネット誹謗中傷、これらの問題は、ひとたび起これば病院経営に大きな影響を与えかねません。

だからこそ、日頃から法務のプロである顧問弁護士と連携しておくことが、トラブルを未然に防ぎ、経営の安定と職場の信頼を守るカギとなります。

病院の顧問弁護士についてお困りの方は、賢誠総合法律事務所にぜひご相談ください。