ホテル・宿泊事業を支える法務:「トラブル予防」の重要性と顧問弁護士の役割
当事務所では、ホテル・旅館などの宿泊施設様を対象に、宿泊施設運営に必要な法律知識についてのセミナーを開催し、多くの反響をいただきました。本コラムでは、そのセミナー内容を抜粋してご紹介し、宿泊事業における法務の重要性、特に、「トラブルの予防」に焦点を当てた顧問弁護士の役割についてご案内いたします。
宿泊施設運営で直面する多様な法的問題
宿泊施設の運営においては、多岐にわたる法的問題への対応が必要となります。例えば以下のようなケースはよくあるトラブルの一例ですが、いずれも適切な予防策を講じることでトラブル発生のリスクを低減することが可能です。
ゲストとの金銭トラブル
- Case 1 宿泊キャンセル
決済方法を予約時決済に限定したり、明確なキャンセルポリシーを設定し事前に同意を取得しておくことが重要です 。
- Case 2 部屋の汚損・破損
利用規約等で具体的な損害賠償義務を定め、あらかじめ同意を取得しておくことが望まれます 。
- Case 3 スキッパー
宿泊料を支払わずにチェックアウトするゲストに対しては、予約時決済やデポジット請求、グループ間/同業者間でのブラックリストの作成・共有などの予防策が有効です 。
ゲストからのクレーム対応
現場では日々様々なクレームの発生があり得るところですが、正当なクレームと、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の判別は容易ではありません 。また、スムーズなクレーム対応に失敗した場合、トラブルが拡大し、自社の信用棄損につながるリスクもあります。
そこで、予防策として、クレームを類型化し、初動対応をあらかじめ類型別に準備・周知徹底することが不可欠です 。これによって対応の誤りを減らし、コスト拡大を防ぐとともに、過去事例との一貫性を保つことも可能となります。
具体的には、
- 顧客に謝罪する場合は対象を明確化・限定する
- 状況を迅速・正確に把握する
- 現場監督者や社内外の相談窓口(法務部門、顧問弁護士など)への速やかな情報共有・相談体制を構築しておく
といった対応が考えられます。
その他の法律問題
宿泊施設運営にあたっては、ゲスト対応以外にも以下のような様々な法律問題が発生し、そのいずれも適切に対応する必要があります。
- 労働問題(パワハラ・残業代未払など)
- 顧客情報の漏洩
- 取引先との契約関係の整備・管理
- 旅館業法・消防法などの各種法令対応
顧問弁護士による「予防法務」のメリット
ホテル・宿泊施設の経営においては、SNS投稿や口コミなどの「レピュテーションリスク」を含め、「トラブルの予防」が極めて重要です。一度トラブルが悪化・長期化すれば、その損失は数百万円、数千万円では済まないこともあります。
顧問弁護士は、この「トラブルの予防」において最も力を発揮します 。
具体的には、以下のようなサービスを通じてトラブルを未然に防ぎ、あるいは早期に沈静化することで、不測のコストやビジネスリスクを軽減することが可能です。
- 最適な契約関係の整備(ゲストや取引先との契約書・利用規約・宿泊約款など)
- トラブル対応のための体制構築支援
- 日常的な法務相談(クレーム対応時の顧客向け回答案作成など)のドラフト作成を含め、あらゆる法律問題を日常的に相談できるため、初動の誤りを防げます 。
当事務所は、観光法務に強みを持ち、ホテル・観光事業者様から、日常のゲスト対応や人事労務、コンプライアンス、M&Aに至るまで、幅広くご相談をいただいております 。
宿泊・観光事業の運営における不安や疑問、予防法務体制の構築、契約書の見直しなど、お気軽に当事務所までご相談ください 。