AI生成物と著作権
1 はじめに
近年のAI技術の急速な進化に伴い、ビジネスの現場でAIを活用する機会が増えています。
しかし、その利便性の影で、AI生成物にまつわる著作権トラブルのリスクも顕在化しています。
2 AI生成物の利用が著作権侵害となる要件
著作権侵害が成立するか否かは、著作物に「類似性」と「依拠性」が認められるかが基準となります。AI生成物においても、この判断基準は変わりません。
ただし、AI生成物に、既存の著作物との「類似性」「依拠性」が認められる場合であっても、権利者から利用許諾を得ている、もしく著作権が制限される場合の利用(著作権法第30条、私的使用のための複製など)においては、著作権侵害に当たりません。
3 裁判例:AI生成物が既存の著作物に酷似し著作権侵害と認められた事例
AI生成物の「利用段階」で、その酷似性から著作権侵害が認定された代表的な国際事例として、「ウルトラマン画像生成AI事件(中国)」があります。
中国の生成AIサービスが、日本の特撮キャラクター「ウルトラマン」の画像を無断で学習データに利用し、ユーザーがプロンプトを入力することで、ウルトラマンの画像に高度に類似した画像を生成・配布していたところ、日本の円谷プロダクションが、中国のAIサービス提供企業を相手取り、著作権侵害訴訟を提起しました。
中国の裁判所は、AI生成画像がウルトラマンのキャラクターと「類似性」があることを認め、著作権侵害と判断した上で、AIサービス提供企業の責任を認める判決を下しました。
4 最後に
海外の事例を紹介しましたが、日本の文化庁も、AI生成物が既存著作物に酷似する場合については、「人がAIを利用せず絵を描いた等の場合と同様に判断される」としており、類似性と依拠性が認められれば著作権侵害となる可能性を指摘しています。
このようにビジネスにおいてAIを活用する際に、法的トラブルが生じる可能性がございます。トラブルを未然に防ぐためにも、専門家である弁護士へご相談ください。