相続放棄にかかる費用はいくら?司法書士と弁護士に依頼する際の相場も比較

相続放棄にかかる費用はいくら?司法書士と弁護士に依頼する際の相場も比較

相続放棄を検討する際、多くの方がまず気にされるのが「費用」に関する問題です。

「自分で手続きすれば安く済むのか」「専門家に依頼すべきか」「依頼すると費用はどの程度かかるのか」など、不安や疑問を抱えたまま、判断を先延ばしにしてしまうケースも少なくありません。

しかし、相続放棄は一度きりの重要な手続きであり、期限内に正確に行わなければ、借金やトラブルを引き継いでしまう可能性もある非常にデリケートな問題です。

本記事では、相続放棄にかかる費用、自分で行う場合と専門家に依頼する場合の違い、費用を抑えるための具体的な方法、そして見落とされがちな「見えないコスト」について、弁護士の視点からわかりやすく解説いたします。

1、相続放棄にかかる費用|弁護士と司法書士に依頼すべき?

相続放棄の手続きパターン比較表

相続放棄には、手続きの方法によって大きく異なる費用がかかります。

ここでは、自分で行う場合・司法書士に依頼する場合・弁護士に依頼する場合の費用相場を比較します。

(1)自分で相続放棄の手続きをおこなう場合|5,000円~1万円

  • 収入印紙代:800円
  • 戸籍謄本取得費:約500~2,000円
  • 郵便切手代:400~1,000円

①自分で相続放棄の手続きをおこなうメリット

  • コストを最小限に抑えられる
  • シンプルな手続きであれば、時間と労力をかければ自力でも可能

②自分で相続放棄の手続きをおこなうデメリット・注意点

  • すべての書類を自分で収集・作成する必要があり、ある程度の法律の理解が必要になるケースもある
  • 書類の不備、記載ミスなどによる却下や修正対応のリスクが高い
  • 「3か月以内」の期限を過ぎると放棄が認められない(法的な起算点の判断も自己責任)

③「単純な相続放棄で時間に余裕がある人」におすすめ

  • 相続関係が非常に単純で、法的リスクがないことが明らかな場合
  • 時間に余裕があり、自分で調べながら対応できる方

(2)司法書士に依頼する場合|3万円~7万円

  • 費用:30,000円~60,000円程度
  • 実費:印紙代・切手代・戸籍取得代など(数千円)

①司法書士の対応してくれる業務内容

  • 家庭裁判所への申立書類作成
  • 必要書類(戸籍等)の取得代行
  • 書類提出・送付の代行

②司法書士に依頼するメリット

  • 自力で書類を整える必要がなく、手間を大幅に削減
  • 法的知識がなくてもスムーズに申立ができる

③司法書士に依頼するデメリット・注意点

  • 相続人間のトラブルや債権者からの通知など、争いごとがある場合は対応不可
  • 裁判所との対応はできないため、基本的には書類中心のサポートに留まる

④「専門家に任せたいけどコストを抑えたい人」におすすめ

  • 相続人や債権者との間で争いがなく、財産や借金の状況が明確な場合
  • 費用は抑えつつ、書類に関する手続きは専門家に任せたい場合

(3)弁護士に依頼する場合|5万円~15万円

  • 費用:50,000円~100,000円程度 ※複雑なケースの場合、120,000円~150,000円以上になる場合も

①弁護士の対応してくれる業務内容

  • 書類作成・収集
  • 家庭裁判所への申立と補正対応
  • 相続人間の交渉・調整(代理権あり)
  • 債権者からの連絡・督促への対応
  • 相続関係のトラブル全般に対応
  • 必要に応じて限定承認や他の相続人の放棄支援まで可能

②弁護士に依頼するメリット

  • 複雑な事情にも法的に的確な判断・対応が可能
  • 家庭裁判所や債権者とのやり取りや交渉もすべて任せられる
  • 「放棄すべきか否か」の判断相談から依頼できる
  • トラブルを未然に防ぐリスクヘッジとしての効果も高い

③弁護士に依頼するデメリット・注意点

  • 他の方法に比べて費用が高い
  • 事務所ごとに報酬体系が異なるため、明細とサービス範囲の確認が必要

④「相続放棄のトラブルが起こりそうな人」におすすめ

  • 相続関係にトラブルがある、または将来的に揉めそうな場合
  • 債務(借金)が絡んでいる場合
  • 他の相続人とのやり取りや調整が面倒・難しい場合
  • 法的に確実で安全な手続きを希望する方

2、費用だけで選んで後悔しないために知っておくべきポイント

相続放棄は一度しかできない「取り消し不可能な手続き」です。費用の安さだけで選んでしまうと、法的に重大なミスや取り返しのつかない状況に陥る可能性もあります。

ここでは、弁護士の観点から見た注意点や依頼時のチェックポイントも交えて詳しく解説します。

(1)自分でやるとコストを抑えられるが、失敗リスクもある

①期限切れの可能性がある

相続放棄には「相続開始を知った時から3ヶ月以内に申請する」というルールがあります。この期限内に裁判所に正式な申立書が受理される必要があるため、郵送や補正対応を見越して早めの準備が必須です。

②書類不備の可能性がある

家庭裁判所への提出書類(申立書、戸籍謄本、住民票等)は、形式・内容ともに非常に厳格です。1枚でも不備があれば修正が必要となり、最悪の場合、申請期限をオーバーすることもあります。

③申立却下の可能性がある

申立が却下され、再提出の機会が与えられないこともあります。特に、複数相続人がいる場合、1人の相続人の手続に不備があると、その相続人だけ借金を背負わされるなどトラブルに発展するリスクもあるため、全体を見た判断と進行管理が重要になってくるでしょう。

(2)費用の安さだけをアピールする専門家には注意する

①専門家に依頼する際は明細をしっかりと確認する

<弁護士や司法書士に依頼する際は、「いくらかかるか」ではなく、「何に対して、どこまでのサービスが含まれるか」を明確にしましょう。

例えば、「戸籍収集は依頼者が行うのか、代行してくれるのか」「裁判所や債権者への対応も含まれているか」など、見積の中身を必ず確認することが重要です。

②初回無料相談を活用する

弁護士事務所によっては、初回の無料相談があります。相談時に相続放棄以外の選択肢(例:限定承認)の可能性も含めて法的にアドバイスしてくれることもあるため、活用するとよいでしょう。

3、相続放棄の費用を抑える具体的な方法

相続放棄は、選ぶ方法やタイミング次第で費用を抑えることが可能です。ここでは、弁護士・司法書士に依頼する際の費用を少しでも抑えるためのコツや、実際に役立つ工夫をご紹介します。

(1)無料相談をうまく活用する

①初回無料で全体像を把握し、費用見積もりを比較する

多くの法律事務所では、初回無料相談を実施しています。 無料相談を活用することで以下のメリットがあります:

  • 自分のケースが「弁護士に依頼すべきか」「自分でできるか」判断できる
  • 相続放棄の流れや必要書類、注意点を無料で具体的に把握できる
  • 事務所ごとの費用体系や対応の違いを比較できる

初めて相続放棄を検討する方は、いきなり依頼せず、複数の事務所に相談することが重要です。費用はもちろん、説明の分かりやすさや対応の丁寧さも比較ポイントになります。

(2)複数人で依頼することで費用を抑える

①兄弟姉妹などの同時の相続放棄でコストを抑える

相続放棄は、相続人がそれぞれ個別に申立てる必要がありますが、同一家族・兄弟姉妹で同時に依頼することで、費用を割安に設定している事務所もあります。

例:

  • 1人だけで依頼すると70,000円
  • 3人同時に依頼すれば、1人あたり50,000円に減額 など

家族で同じ弁護士に依頼することで、戸籍の取得や家庭裁判所の対応もまとめて行えるため、進行もスムーズになりますし、申立てに必要となる実費の節約にもなります。

(3)早めの相談で無駄な費用を防ぐ

①期限ギリギリはリスクが高くなる

相続放棄には「3か月の期限」があるため、ギリギリに相談しても間に合わない可能性があります。

ギリギリに相談すると、以下のようなリスクが発生する可能性があることを知っておきましょう。

  • 急ぎ対応の追加料金がかかる
  • 書類の不備で再申立が必要となり、2度手間・2重コストになる
  • 万が一期限に間に合わないと、放棄そのものが認められない=多額の債務を相続する可能性も

そのため、少しでも「放棄するかも」と思った段階で、まずは無料相談でリスクを確認することが大切です。

4、相続放棄にかかる費用以外の「見えないコスト」

相続放棄という言葉から、多くの人がまず気にするのは「いくらかかるか」という目に見える金額です。

しかし実際には、それ以上に重要なのが、「時間的コスト」「精神的コスト」「失敗コスト」といった「見えないコスト」です。

この章では、費用以外に見落とされがちな3つの重大コストを弁護士からのアドバイス付きで詳しく解説します。

(1)時間的コスト|書類収集・作成・裁判所対応にかかる膨大な時間

相続放棄は、裁判所に申立書を提出することで完了する手続きではありますが、実はその申立書を提出するためには、以下のような工程が必要です。

  • 戸籍謄本の収集(被相続人+相続人全員分)
  • 住民票・除籍謄本・改製原戸籍など複数の書類を収集
  • 申立書の作成(家庭裁判所所定の形式)
  • 照会書への回答、補正への対応
  • 郵送・交通・問い合わせなどの連絡作業

これらの作業は、慣れない人にとっては丸1日〜数日以上かかることも珍しくありません。ミスや不足があれば補正対応が必要となり、二度手間・三度手間でさらに時間がかかるケースも多く見られます。

<弁護士によるアドバイス>

役所・家庭裁判所は平日しか対応できない場合が多いため、会社員の方や育児中の方はスケジュール調整に苦労されることが多いです。

プロに依頼すれば、これらの工程を一括で任せられるため、時間的コストを最小限に抑えることができます。

(2)精神的コスト|不安・焦り・プレッシャー

法律文書に慣れていない一般の方が、家庭裁判所に提出する書類を自分で作成・提出するのは精神的にも大きな負担になります。

よくある精神的ストレスは以下の通りです。

  • 「期限内に間に合うのか」という焦り
  • 「この書類で合っているのか」という不安
  • 「裁判所から連絡が来たらどうしよう」という緊張感
  • 「失敗したら借金を相続するかも」という恐怖感

これらの精神的プレッシャーは、手続きが完了するまでの数週間〜数か月、常に付きまとうことになります。

<弁護士によるアドバイス>

「相続放棄したいけど手続きが不安なので、専門家にお任せしたい」と相談に来られる方は非常に多いです。

実際には、弁護士に依頼しただけで精神的に落ち着いたというお声をよく聞きます。失敗して借金を背負わされるかもしれないという心理的圧力は、それだけ大きいのです。

(3)失敗コスト|1回限りのチャンスを失い、多額の債務を背負うリスク

相続放棄は、原則として1回きりの手続きです。つまり、やり直しや再申請はできません。

具体的には以下のような失敗事例が散見されます。

  • 戸籍収集が不十分で申立が却下された
  • 起算点を誤って、期限を1日過ぎてしまった
  • 書類を自力で作成したが不備があり、受理されなかった
  • 無料テンプレートを使った結果、形式不備で受理されなかった

そして、こうしたミスの結果、以下のような負担が生じることが考えられます。

  • 相続放棄ができず、被相続人の借金をすべて相続
  • 弁護士に再依頼することで、二重の費用発生(初期費用+再対応費)
  • 他の相続人ともトラブルになり、関係悪化や訴訟に発展

<弁護士によるアドバイス>
特に怖いのは、「申立書を出したけど、却下されたことに気づいていなかった」というケースです。申立書を提出して相続放棄できたと思い込んでいたら、家庭裁判所からの通知を見落とし、相続放棄が受理されていなかったということもあります。

こうした「取り返しのつかない損失」を防ぐためにも、最初から正確に手続きを行うことが最大の節約になります。

相続放棄に関するよくある質問

(1)相続放棄にはお金がかかる?

申立時の収入印紙や戸籍の取得費など、自分で手続きをすると5,000円~1万円程度の実費がかかります。専門家に依頼する場合は、実費に加えて報酬が別途必要です。

(2)相続放棄を弁護士に頼むといくらかかる?

弁護士に依頼した場合の相続放棄費用は、通常で5万円~10万円程度です。複雑な相続やトラブルがあるケースでは、15万円以上になることもあります。

(3)相続放棄は誰に頼めばいい?

相続放棄の手続きは、弁護士または司法書士に依頼できます。書類作成のみなら司法書士でも対応可能ですが、相続人間のトラブルや債務問題が絡む場合は弁護士が適任です。不安な点があるなら、まずは弁護士への無料相談がおすすめです。

相続放棄の相談は賢誠総合法律事務所へ

当事務所は、全国から多数の相続放棄の依頼を受けており、確かな実績を有しております。

熟慮期間を経過していたり、他の事務所で難しいと言われたりした場合でも、是非一度ご相談頂ければと存じます。

必要戸籍一式の取り寄せから、各案件に応じた申述書の作成、裁判所とのやり取り、最終的な受理まで、全て代理人である弁護士にお任せいただけます。また、被相続人の債権者への相続放棄の通知対応も致しますので、ご依頼者様の精神的なご負担も大幅に軽減されることと思います。

費用につきましては、全ての実費込みで、お一人当たり一律6万6000円(税込み)です。追加費用は頂きませんので、安心してご依頼頂けます。

相続放棄は是非、賢誠総合法律事務所にご相談ください。

まとめ

相続放棄は、「やる・やらない」だけでなく、「いつ、誰に頼むか」によって結果や対応する内容が大きく変わる重要な手続きです。

  • 自分で行えば費用は抑えられるが、ミスや期限切れのリスクがある
  • 専門家に依頼すれば安心だが、費用や対応範囲の確認が必要
  • 相続放棄には費用以外に「時間的コスト」「精神的コスト」「失敗コスト」もかかる

失敗すると、借金を背負ったり、トラブルに巻き込まれたりと、取り返しのつかない事態になることもあるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

2025.06.18野田俊之