相続放棄ができないケースとは?対処法・注意点を詳しく解説

相続放棄できない

この記事では、相続放棄ができないケースについて簡単にわかりやすく解説します。

遺産相続人が相続財産を処分したり、3ヶ月の熟慮期間を経過した場合、相続放棄ができなくなってしまいます。相続人であると判明した時点で早急に策を練ることが必要です。

1、相続放棄とは?

相続放棄とは、被相続人の死亡により発生する包括承継(=プラスの財産もマイナスの財産も全て引き継ぐこと)の効果を消滅させる相続人の行為をいいます。

相続放棄をすると、民法939条により、その相続人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。

そのため、相続放棄をした相続人は、相続から完全に離脱する、つまりプラスの財産もマイナスの財産も全て承継しないことになります。

相続放棄は、家庭裁判所に対する申述の方法で行う必要があります(民法938条)。

2、相続放棄が認められない具体的なケース

相続放棄が認められない具体的なケース

(1)単純承認が成立した場合

①相続財産を処分したとき(民法921条1号)

相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、その相続人は、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。

単純承認とは、被相続人の権利義務を無限に承継することをいいます(民法920条)。

単純承認をしたとみなされるということは、相続をしたものとして、相続放棄ができなくなることを意味します。

判例上、民法921条1号にいう「財産」とは、「一般経済価額」を有する物とされていますが(大判昭和3年7月3日新聞2881号6頁)、具体的に何が財産の処分に当たるのかについて、法律上も、判例上も、明確な定義はありません。

もっとも、被相続人の預貯金をおろして使い込んでしまったり、被相続人名義の不動産の登記を自己の名義に変えたりする行為は、財産の処分に当たると判断される可能性が極めて高いでしょう。

また、遺産分割協議書に印鑑を押す行為も、財産の処分にあたると判断され、単純承認をしたとみなされる可能性が高い行為です。遺産分割協議は、相続財産について相続分を有していることを前提に処分するものだからです。

もっとも、遺産分割協議が錯誤により無効であるとして、単純承認の効果が否定される場合もあるため、気になる場合は、専門家に相談すると良いでしょう。

一方、相続財産の処分をしたとしても、それが保存行為にあたる場合には、単純承認とはみなされません(民法921条1号但書)。

何が保存行為にあたるかの判断は、ケースバイケースですが、修繕や補修、腐敗しやすい物や保存に著しい費用を要する物の廃棄・換価等は、保存行為とされる可能性があるでしょう。

②熟慮期間を経過した場合(民法921条2号)

自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に放棄をしない場合も、単純承認をしたものとみなされ、相続放棄をすることができなくなります(民法915条1項・921条2号)。

この3ヶ月の起算点は、法律上は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」と定められています。これは、第一順位の相続人であれば、被相続人の死亡を知った時であり、後順位の相続人であれば、先順位の相続人が存在しないことを知った時、または先順位の相続人が相続放棄をしたことを知った時です。

ただし、判例上一定の例外が認められており、自身が相続人であることを知った時から3ヶ月の期間が経過してしまった場合でも、相続放棄が認められる場合があります。

その場合には、申述書に「なぜ自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月が経過してしまったか」という点を詳しく書いていく必要があります。

(2)手続きに不備がある場合

相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にしなければいけません。申述書には、被相続人の最後の住所地や本籍地を記載する必要があるほか、被相続人の戸籍等を添付する必要があります。

これらの記載事項や添付資料に不備がある場合には、家庭裁判所から補正を求められます。合理的期間内に補正の要請に応じられない場合には、相続放棄の申述が認められなくなる可能性があります。

被相続人と疎遠であり、被相続人の最後の住所地や本籍地が不明な場合には、ご自身の戸籍から追跡して調査をしなければいけません。

特に、被相続人とご自身の戸籍上の関係性が遠い場合(甥・姪や異父兄弟など)は、3ヶ月の期間内にこれらの情報を収集することは容易ではありません。また、被相続人が結婚・離婚を繰り返して多数の転籍をしている場合など、戸籍の調査に思いのほか時間がかかる場合もあります。

このような場合には、3ヶ月の期間内に相続放棄の申述を終えるため、早めに専門家に相談しましょう。

また、相続放棄の申述をした後、家庭裁判所から「照会書」という意思確認のための書面が送られてくる場合があります。この書面も、期限内に返送をしない場合には、相続放棄の申述が認められなくなる可能性があります。

3、よくある質問

(1)孤独死した身内の住まいを特殊清掃したら相続放棄できない?

孤独死した身内の住まいを特殊清掃しても、相続放棄が認められる可能が高いでしょう。

孤独死した方の住まいを清掃する行為は、「一般経済価額」を有する物の処分にあたるとは考えにくいですし、保存行為として説明することも可能だからです。

(2)故人の身の回りのものを処分したら相続放棄できない?

これは、「身の回りのもの」が「一般経済価額」を有するかどうかによりますので、ケースバイケースです。

(3)連帯保証人は相続放棄できない?

連帯保証人も相続放棄をすることができます。

もっとも、連帯保証している債務は、連帯保証人自身の債務のため、相続放棄をしたとしても、支払義務を免れることはできません。

ご自身が連帯保証をしていないその他の債務については、相続放棄をすることにより、支払義務を免れることができます。

(4)生前に相続放棄はできない?

相続放棄は、被相続の生前にはすることができません。

(5)親の借金は相続放棄できない?

親の相続を放棄すれば、親の債務は相続しません。

(6)配偶者は相続放棄できない?

配偶者も相続放棄をすることができます。

(7)全員相続放棄するとどうなる?

相続人が不在なので、誰のものでもないという状態になります。最終的には国庫に帰属します(民法959条)。

4、相続放棄の相談は賢誠総合法律事務所へ

当事務所は、全国から多数の相続放棄の依頼を受けており、確かな実績を有しております。

財産の処分にあたりうる行為をしてしまった場合や熟慮期間を経過してしまった場合など、他の事務所で難しいと言われたときでも、是非一度ご相談頂ければと存じます。

必要戸籍一式の取り寄せから、各案件に応じた申述書の作成、裁判所とのやり取りまで、全て代理人である弁護士にお任せいただけます。また、被相続人の債権者の対応も致しますので、ご依頼者様の精神的なご負担も大幅に軽減されることと思います。

費用につきましては、全ての実費込みで、お一人当たり一律5万5000円(税込み)です。追加費用は頂きませんので、安心してご依頼頂けるかと存じます。

相続放棄は是非、賢誠総合法律事務所にご相談ください。

5、まとめ

今回は、相続放棄ができないケースについて解説しました。相続放棄の手続きについて悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。

2024.07.17佐藤史帆